夢の中だと思う現実
やめて。
どうして。
できないよ。
どうすればいいの?
おしえて。
おねがいだから、わたしのはなしもきいて。
わたしをみて。
おかあさん、おねがいだから……
あぁ、あぁ、あぁ。
悲鳴を上げる。
喉が絞り上げられ、心臓がひんやりする。
目が熱くなり、脳が焼き切れるかと思い目を覚ます。
助けて。
「お、かぁ…さ……」
「ここにいるわ、真昼」
きゅ、っと手が温かいモノに包まれる。
優しい声。
欲しかったモノ。
与えられなかったモノがここにある。
与えられず、見捨てられ、出来ないことを笑われた。
教えてくれる人は誰も居なかった。
一緒に考えてくれる人は存在しなかった。
私に関心を持つ人はいなかった。
いつだって私は一人で、何も出来なかった。
「お母さん」
「なぁに、真昼?」
名前を呼んでくれる人などいなかった。
でも今は、名前を呼んでもらえる。
手を取ってもらえる。
微笑みかけ、言葉を待ってくれる。
嬉しい。
嬉しい。
あぁ、お母さん。
だから苦しいのも平気。
一人きりより楽だもの。
私がない恐怖より、死ぬかも知れないけれどそれを助けてくれる人たちがいる今の方が。
「よかった、お母さん、いた」
「いるわよ、真昼」
「良かった」
私は安堵する。
お母さん。
私はここにいても良いんだよね。
いらない子じゃないんだよね。
今でも覚えている一人きりだった毎日。
あの子が退院するまで、家で家族でご飯を囲むなんて行為は記憶になかった。
あったとしても、きっと記憶に残るようになるよりずっと前。
お金だけ渡された小さかった頃。
お父さんもお母さんもいない夜。
いつも隣にあったはずのあの子もいない毎日。
悲しくて、寂しかった。
学校で友達を作っても、友達はいつの間にか離れていっていた。
寂しかった。
誰も居ない家。
話し相手もいない毎日。
勉強を頑張っても、運動を頑張っても褒めてくれる人もいない。
それどころかクラスメイトに馬鹿にされた。
いらない子供の癖にって。
みんなの前で。
でも先生は注意しなかった。
あぁ私は学校ですらそう思われていたんだと知った。
私は何処にも居場所はなかった。
妹が退院した。
嬉しかった。
私を見てもらえるようになると思った。
でもやっぱり誰も私を見ない。
妹ばっかり。
妹も、私を避ける。
悲しかった。
あの暖かかった子はもう何処にもいないんだと理解した。
誰も私を見ない。
誰も私と話してくれない。
誰も私を認めない。
そんな毎日のまま高校に進学した。
夜に母が私の分も学費を出すなんてと言っていた。
妹よりも成績が良かった。
うぅん、誰も相手にしてくれないから毎日勉強ばかりしていた。
だから手続きをして特待生になった。
主席だったらしく、返還不要の枠に入れた。
少しだけ嬉しかった。
高校で頑張って勉強を続けた。
小学校や中学の時より、勉強を頑張れば頑張るほど先生達の覚えは良くなった。
でもあるときから苦情を言われるようになった。
妹のことでだ。
成績が悪いのはまだしも、学校の見目良い男子生徒と仲良くなり過ぎていると。
複数の男子生徒と同時に付き合っているようだ、と。
驚いてその男子生徒のことを調べ、彼らの周りにいる友人やクラスメイト達に話を聞いた。
先生が苦情を言うくらいに、彼らは変わったのだという。
悪い方向に。
私が、私みたいなのが姉だからだろうか。
家族だからだろうか。
何度も妹に話しかけた。
おつきあいするのは良いけれど、出来たら一人に絞って欲しいと。
妹の評判が、男子生徒の周りの人たちに悪いと。
具体的にどうしたらいいのか判らない。
でも出来たら悪く言われて欲しくなかった。
それは辛いから。
それなのにダメだった。
あの子は男子生徒達に泣きつき、彼らの親や保護者達を巻き込み、誰かを悪者にしないと収拾が付かないような状態に学校を陥れ、全て私が悪いのだとある日言った。
彼らに好意を抱いている少女達が妹に意地悪するのも、妹が苛められるのも、彼らが親や保護者に厳しい物言いをされるのも、彼らの友人達が離れていったのも、全部が全部私が影で悪意を囁き続けたからだと。
そんなことは彼ら以外誰も信じなかった。
しかし私だけを悪とすると酷く綺麗に収拾が付いた。
学校が対応をする前に両親は私を追い出した。
彼らの親が私を回収し、学校の教師達と協議して私を他の学校へ転入させた。
学費も、生活費も彼らの親たちが出してくれた。
私は、一人だった。
本当に一人になってしまった。
悲しくて、寂しくて、泣き続けた後の記憶は、ない。
本来ヒロインであるはずの妹、真昼の感じていたこと。
元々が全責任を押しつけられた姉だった事と、その前世を覚えているために幼い頃から精神負荷が酷いためにものすごく心が弱いです。
現在母親が応えてくれているので、何とかなっているような感じです。
多分まともに学校に通えるほど身体は回復しないと思われます。