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既知だと思いこんだ世界

 小さな頃からずっと羨ましかった。

 何でも出来る。

 そして優先されるお姉ちゃん。

 いつだってアタシが大失敗する前に手をさしのべてくれた。

 それが悔しい。

 だって、アタシは……アタシは前世のことを覚えている。

 そこで生きて成長した記憶がある。

 それなのにお姉ちゃんに適わない。

 悔しい、悔しい。

 前世というアドバンテージがあるはずなのに、それが全く生かされない。

 嫌だ。

 こんな世界でなんか、生きたくない。

 普通前世の記憶があるんだから、その記憶が幼児とはいえ知識を知能を底上げしてくれるモノじゃないの?

 なにかこう、特別な力があるモノじゃないの?

 ただただ普通の、少しだけ他の子供より聞き分けがよいけれど、思っているのと実際の身体の差異から生じる失敗でやっぱり手の掛かる子供のままで、悔しい。

 アタシが特別になるときはいつなのだろう。

 そう思って生きてきた。

 特別なはずだ。

 だって私はこんなにも鮮やかに前の人生を覚えている。

 そうやって覚えている前の人生より年齢を重ねた頃、彼に出会った。

 普段は院の研究室に籠もってばかりいるけれど、たまにはと友人に強制されて飲み会に出てきた男性。

 無精ひげを生やし、櫛さえ入れていないぼさぼさの髪で、でもよく見るとそれを補うくらい綺麗な顔立ちをしていた。

 そしてその顔に、何となく見覚えがあるような気がした。

 誰だろう、何処でだろう。

 皆と話しながらも彼を見る。

 友人に気があるのかと聞かれ、気にはなると答えた。

 そう、気になる。

 どこかに引っかかっているのだ。

 何処にだろう?

 首を傾げながら、そう言えば前世ではこういう男女で飲むことを合コンと言ったなぁと思ったときに思い出せた。

 そうだ、ゲームだ。

 ヒロインの父親。

 佐伯礼夜。

 余り家庭に興味がない父親として描かれていたけれど、本当はヒロインの入院費を稼ぐために仕事を増やしていたからこそ、滅多に家に帰ることもお見舞いに行くことも出来なかった。

 そして私は、ヒロインの母親の真子だ。

 子なんて付く名前はださくて嫌だったけれど、この男の人に好まれる容姿はヒロインに良く似ている。

 あぁ、そうか。

 そうだったんだ。

 この奥手そうな男の人と結ばれるために、私にはこの世界のことを知っている必要があって、だからこそ前世の記憶があったんだ。

 特別なのは私が産む娘。

 でも娘と恋をする男の子達は皆エリートの卵。

 つまり老後がかなり楽と……老後までは苦労しそうね。

 それに産むのはヒロインだけじゃないわ。

 ヒロインを苛める身近な敵も。

 ヒロインの双子の姉。

 酷く醜い女。

 あんなのも産むなんて嫌だわ。

 この私と彼から産まれるのだから、それなりに容姿は良いはずなのに……あぁ、だからヒロインが病気の時にこれ幸いと関心を偏らされたのね。

 仕方がないわよね、醜いんだもの。

 でもそんな醜い存在育てたくないわ……あぁ、そうだ!育ててあげるんだから、その分働いて貰えばいいのよ。

 幸い彼の実家はお金持ちだったはずだから、お年玉とかお祝いとか奮発してくれるだろうし。

 アレに与えられるそれらは全部私が貰えばいいわ。

 ふふ、私はすっきりしたから彼に微笑んだ。

 隅でお酒を飲んでいた彼に近づき、どんなことを研究しているのかとか彼が話しやすそうなことを話題にする。

 難しいから、いくつかの単語を質問して説明して貰う。

 本当は興味ないけれど、でも彼と結婚しないとヒロインが産まれないから仕方がないわよね。

 私はニコニコと微笑みながら、彼の興味を、行為を引くように行動した。





正直、この母親が転生者でなかったら同時期に熱出す可能性は低かったと思います。

故に良かったとも悪かったとも言えません。

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