【7】
7話目です
「少しは落ち着きましたか?」
エルが出て行ったあとエリーヌとアリアは呆然としていたが暫くして我に戻った。
「どういうことなの?」
「そ、そうですよ!いきなり嫁だなんて!」
「別にお二人の意思を強制してるわけじゃないですよ、嫌なら嫌でいいんですし、お二人が恋人同士…というのは嫌ですか?」
恋人同士、その質問に赤面する二人であったが先に口を開いたのはアリアだった。
「い、嫌というわけでは、そういう問題ではないと言いますか変ではないと言いますか…」
「まぁ、アリアさんってば…もしかしてアリアさんも百合でしたか?」
イタズラっ子のような表情を浮かべなら聞くカミラに対し、意外な答えが返ってきた。
「まだよく分かりませんがエリーヌさんはとても魅力的な人だと思います、わたしはまだまだ分からない事が沢山ありますがちょっとずつ知って行けたらと思います」
「あ、あらあら…」
「な、なな、何を言ってるの!?」
突然のカミングアウトに当然の如く戸惑いを隠し切れないエリーヌだがカミラも予想とは違う返答に戸惑いの色が見えた。
「ね、熱でもあるんじゃない?」
「…熱はないみたいですよ」
アリアのおでこに手を当てたものの至って平熱とカミラは判断した。
「熱なんてないですよ?」
暫しの沈黙、その沈黙を解いたのはカミラだった。
「そ、そういえば、アリアさんはどんな魔術が得意なんですか?」
随分と極端な話題の変え方だったがカミラにはそんな事を考える余地はなかった。
魔術はどんなものを生み出せるとはいえ人の思考や性格によって得意魔術は異なる。
「あ、それは私も気になってた」
カミラの話題に乗らなければ更に気まずい雰囲気になると思い強引に話題に乗るエリーヌだが、その話題が出てからアリアの顔が引きつったように思えた。
「それがですね…実は」
とても言いづらそうにしているアリアだったが、弟子になるからには弟子の得意な魔術と不得意な魔術ぐらいもちろん知っておく必要がある。
「……使えないんですよ」
「…え?」
使えない、その通り意味だ、しかしその言葉は魔力がない人間が使う言葉だ、だがMCTを扱う事が出来るアリアが使う言葉としては不自然だった。
「どういうこと?」
「…イメージが浮かばないんです、魔術というものがどのように発動すればいいのか…皆さんはイメージしたらいいって言いますが何がどういう原理で生み出されるのかが分からなくて…」
「まさか…」
カミラが言いやめた事の続きを話始めるアリア
「はい…魔術師にとって、もっともいけないのは魔術を論理的に理解しようとする事というのは分かってるはいるんです…でも無意識のうちにそういうふうに理解しようとしている自分が居て…」
「これはまた…ちょっとやそっとでは治らないと聞きますが?」
今の時代、魔術師にとってイメージの妨げになる思考は致命だ、アリアの考えは世界中探してもアリアを含め数人くらいだろう。
「はい、ちょっとやそっとではなく治る事は不可能だとされています」
「それってエリーヌさんに弟子入りしても…」
エリーヌは少しの間考えポツリと呟いた。
「魔術は使えない…かな」
2035年に魔術というものが発見されてから論理的、理論的に考えようとする人間はほとんどいなくなった、しかしそういう人間は魔術適性が0とされ魔術が使えない。
「魔術は使えないというのは事実です、ですが魔術を打ち消すことが出来るみたいなんです」
「魔術を打ち消す…?」
魔術を打ち消す、それは今までにない話だった、同じ威力同士の魔術でなら相殺しあう事は出来るが打ち消すというのは聞くことがない、魔術が普及した何十年前にはそういう考えが多く魔術が使えない人々はたくさんいたが打ち消すというのはエリーヌも初めて聞く事だ。
「急にそんな事を言われましても想像がつきませんよ?」
「今までに聞いたこともないしね」
彼女達の当然の反応にアリアは少しばかり考え、口を開いた
「…少しお時間頂けます?」
今回も読んでくださった方ありがとうございます!少しでも読んでくれる人が増えて行くと嬉しいです