【1】
「はぅ…つ、ついに来ちゃった」
人通りが多いある通りで、小柄な少女は呟いた、見たところまだ10歳くらいだろうか、ある家の前で何やらあたふたしている。
「でもいきなりだと迷惑だったりしないかな」
先ほどからインターホンを押そうとしては押せず、押そうとしては押せずを繰り返している、背伸びをしないとインターホンまで届かないその姿が実に可愛らしく通行人が何度も見入ってしまう程だ。
「ここまで来たんだから今更帰れないし…次こそは押そう…!」
少女はそういうと深呼吸をしてから一度心を落ち着かせ(?)、再度インターホンまで手を伸ばした。人差し指があたったところで暫し立ち止まりはしたがようやくインターホンを押すことに成功した。
「お、押しちゃった、でも、押さなければ元も子もないと言うか…」
少女がそう呟いていると家の扉が開いた、少女よりは少し歳が上だろうか、それでも15歳にも満たないだろう。
少女より10cm程身長が高いくらいだ。
「…はぃ…?」
しかし、その少女からは動揺の色が見える。あまり関わりたくない、そんな態度だった。
「ぁ、あの、私をエリーヌさんの弟子にしてくださいっ!」
エリーヌと呼ばれた少女、正確にはエリーヌ M アンジェリーク、Mとは魔術師の名前の間に付く物だ、だが全ての魔術師がもっているわけではない、優秀な実績を残し、魔術師検定で認められた者にのみ与えられる名前だ。
そしてこのラストリアの中では特に有名な少女だ、わずか10歳にして魔術師検定でトップクラスの成績を叩き出した。
頼まれた依頼は必ず成功させるその実績は100%だ。
「ダメ…でしょうか?」
しかし彼女に弟子入りした者のほとんどが一ヶ月以内で辞めていく、一番長く続いた例でもたった二週間という話がある。
エリーヌとの暫くの沈黙が続いたところで後ろから一人の女性が現れた、まだ20歳前後だろうか。
「あ、あれ?エリーヌさんが2人?」
少女の質問に女性は首を横に振り少女に微笑んだ。
「違いますよ、私はエリーヌさんの家で家政婦をしております、カミラと申します、エリーヌさんはこの方で間違いはないですよ、ただ少しばかり人見知りでして…」
「別にいいけど…後悔はしないでね…?」
「…はぃ?分かりました」
少女はその意味は分からずに答えたであろう事はカミラとエリーヌにも分かっている。
お入りください、そうカミラは告げ三人は家の中に入っていった。
「そう言えばお名前を伺っておりませんでしたね」
「すみません、言い忘れていましたね、わたしはアニエス リアリズムともうします、ほかの方からはアリアと呼ばれていますのでお二人にもそう呼んでもらえると嬉しいです 」
少女は彼女達にニッコリと笑い、そう言った。
初回なので2回連続投稿してみました、初めての投稿なのでこれから頑張って行きたいと思いますσ^_^;