【9】
9話目です、良ければどうぞ
アリアは微塵も動いた気配がない、それなのにエリーヌの双炎龍は姿を消した。
「えぇと…何をしたの?」
「何もしてないですよ、ただ、わたしの目に映った魔術は全て消えてしまうんです、わたしの意思とは関係なく」
見る魔術を全て無力化する、この事が他国に知られる事があれば直ぐにでもアリアを利用しようと企む国が奪いに来る事は口にしなくても分かる事だった。
「…だから昨日の夜、視界から外れていた魔術は打ち消せなかったんだね」
「それはそれで凄い気もするんですが」
「いえ、全然凄くないですよ、皆からは他人には知られないようにと言われてきました、わたしのお願いはただ一つ、この力を制御出来るようになりたいんです」
「そんな大事な事を私たちに教えてよかったの?」
他人に教える事にはそれなりのリスクが伴う、しかしアリアはそれを承知でエリーヌに弟子入りをしていた。
「はい」
「…それなら期待に応えなきゃいけませんね、エリーヌさん?」
「そうだね、…こんなのは初めての事だからまずは方法を考えなきゃいけないね」
あっさりと了承した二人を見ながらアリアは少し驚いていたが直ぐにありがとうございますと深々と頭を下げた。
「じゃあ、とりあえず帰りましょうか」
「そうだね」
『やっぱり了承したのって、折角まともに話せる人が出来たのに離れたくないからですか?それとも朝の嫁の一件ですか?エリーヌさんも百合に目覚めてくれました?』
『…知らない』
「?」
コソコソと喋る二人をただただ不思議そうに見ているだけのアリアだった。
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「やっぱりアリアの力の根源ってその思考だよね」
「多分…そうですね、根本的にそこが治らないと意味がないでしょうし」
家に帰り議題に上がっていたのはやはりアリアの事だった。
「カミラ、何かいい案はない?」
「ではでは、お二人が愛し合うのはどうでしょうか!?」
即答だった、案と聞いてからコンマ2秒くらいだっただろう、しかしエリーヌはそれは無視することに決めた、いや、カミラがそう答える事が分かっていたので決めていただろうか。
「…アリアは今までに何か実践した事は何かある?」
「無視ですか!?、慰めてくださいアリアさーん」
「今までにはイメージトレーニングや魔術書読んだりアニメ見たりお菓子食べたりお昼寝したり…」
抱きつくカミラを撫でながら指折り数えるアリアだったがカミラは撫でられる事まで想定していなかったようでどことなく照れているように見える。
「お菓子食べたりお昼寝するのは関係ないとは思うんだけど、でもアニメやイメージトレーニングはいいと思うよ」
「でも全く効果がなくて、他にいい方法があればいいんですが」
「ではゲームとかはどうです?ラストリアが誇る魔術師の日課ですし」
エリーヌは一日の半分以上をゲームに費やしている、カミラの過程ではエリーヌはゲームをしているうちに無意識で想像力が鍛えられているという事だった。
「それも一理あるかもね、今日からゲームする事にしてみよう?」
「は、はい、頑張ります」
「では、とりあえず最初に何をするか決まりましたし夕ご飯にしましょうか」
そう言うとカミラは台所へ夕飯の支度を、エリーヌとアリアは今後の計画の打ち合わせを始めた。
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とあるラストリア行きの列車の中では一人の少女が一枚の写真を見つめていた。
「アリア…」
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