関係
目の前で人が死にそうになっていた。
目の血走った男性は手に包丁を持っている、恐怖に竦む女性。
何が起きているのかは分からない。
それを見つけたのは偶々。
関係ないと回れ右をした。
その場を後にしようとした。
でも、脚が動かなかった。
関係ない。
そう、あの光景はなんら自分とは関係ない。
本当に?
この世界に関係ないことなんてあるのだろうか?
脚が動きだす。
「やめろ!!」
自分でも驚くほどの声量。
「てめえには関係ねえだろ!」
押し込めていた恐怖が鎌首を擡げた。
それを押し込めるように叫ぶ。
「同じ世界で生きてるんだから関係あんだよ!!」
思えば訳のわからない叫びだった。
なんとか男を撃退して、興奮した頭が冷えてきて笑えてきた。
大なり小なり、人は関係を持っている。
同じ道を歩いた人、すれ違っただけの人。
同じ世界に生きてる関係。
助けようと思うのに口実なんて必要だろうか?
今までの自分がちっぽけに見えて笑った。