5/46
満月
「ユウ、今夜は満月だ。」
「ん?ああ、そうだな。まあ、大丈夫だって。」
そう言ってユウは首の傷を指でなぞる。
小林ユウとは物心付く前から一緒に遊んだ仲だった。
俺が狼男だって知った後も変わらずに接してくれた。
そしてユウを巻き込み、狼男にしてしまった。
なにができるわけでもなかったが、ユウのそばにいることで少しでも罪悪感から逃れたかった。
今日はバイトには行かずにユウと一緒に自分の家へ向かう。
晩飯も食わずに俺の部屋でユウは横たわっていた。
噛まれて狼男になった人間はオオカミの力を制御することが難しい。
月の周期に合わせて徐々に制御を失っていく。
満月になると狼男になってしまい、体がオオカミの力を自制できずに、激しい頭痛が襲う。
「ユウ!ユウ!」
テレパシーでユウの脳へ直接声をかける。
両手で頭を抱えてうずくまるユウが、わずかに薄目を開けて俺を見る。
だが、ユウは再び目を固く閉じうめき声を上げる。




