回想
あれ? 雪山・・・…。そうだ、これは夢だ。
このスキー場で遭難したんだっけ。ホワイトアウトして、まだガキだったから、必死にユウと手をつないで歩いて。
寒くて歩けなくなって、それで俺が初めてユウにオオカミの姿を見せて。
俺は冬毛だったからユウに俺の上着を掛けて。ユウと体を寄せ合って吹雪をやりすごしたんだ。
――彼女が寝息を立てて寝ている。彼女は俺を抱いて暖かいって言ってくれた。俺も冬毛なのに、彼女といると暖かくなる。
彼女と居れるなら、俺がんばれる気がする。想像しただけで寿命縮まりそうだけど、たぶんオオカミの姿のままでは子供は出来ないだろう。
「ショウ」「起きた?」「うん」彼女の手が俺の体を撫でる。
「今からご飯作るね」そう言って彼女は服を着て階下に降りて行く。
寺田が逃げて、ヴァンパイアが世界中の人間を支配下に置くために大規模に動き始めた。
俺は大上市に戻る事になった。コウジが死んで、抜け殻みたいになっていたところへ彼女が来たんだ。
春、桜の花が咲く、あの場所で俺は彼女と出会った。
彼女は持っている力を持て余してて、怒ったり不機嫌になると周りの物がよく燃えた。だから彼女はいつも一人だった。
俺だって燃やされるのは勘弁だから、出来れば彼女と会いたくはなかったが、なんせ同じ屋根の下での同居。
よく派手に燃やされて火傷したなぁ。
竜人の血を引いてなければ、そういう能力が無ければ、ごくごく普通の女の子だったんだ。
熱い炎の中に頭突っ込んでる内に、彼女本来の気持ちが見えて来たんだ。




