音楽と金と俺と
「ふぁあ~」
「おい、ショウ。結構な再生回数いってるぞ。コメントもたくさんある」
「マジで? おお、スゲー」
「これは武道館公演もいけるんじゃないか」
「ユウの歌ならマジでいけるかも」
「やっべー楽しい」
「あはははは」
俺はたぶん舞台裏だろうな……。それでも俺の作った曲で盛り上がるならいいか。
「なあ、ユウ。いつまで音楽続けるつもりだ?」
「さあな。将来のことなんてワカンネ」
ユウがいれば音楽で食っていけるかもだけど、俺一人じゃとてもじゃないが無理だろうな。
やっぱどうしてもネックになるんだよな、オオカミの姿でいると。
「ユウ、あのさ、お、俺と音楽で食っていかないか?」
「なにシンコクそうな顔してンだよ。音楽は金のためにあるもんじゃねえよ。お前だってそう思うだろ、ショウ」
「俺は……」
俺だってそう思ってる。けど、この体でマトモに働ける保証は無い。音楽活動に割く時間が短くなるのも嫌だ。でも、それって誰かを巻き込むような話じゃない。俺のワガママだ。
「そのうち考えるよ。そのうちな」
「うん」
なに焦ってるんだろう俺。ひょっとして焦ってるの俺だけ?
――師匠だったら笑い飛ばしてくれるんだろうな……。




