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「山が青く光ってる!」


「夜になると魔力を溜めた木々はああやって光るんだ」


「うわあ~、きれぇ~」


ハヤトは旋回して森の上空を滑空する。


「あの半透明の生き物はなに?」


「神様か神の使いかだと思う」


「これも魔力のせいなの?」


「そうだな。俺達が動物っていうのもあると思うけど」


ハヤトはその半透明の存在に近づき、叫ぶ。


「我が名は黒神隼。そなたの山にてしばし休みをとらせてもらいたい。良いか。」


木々よりも頭一つ分抜けた巨大な半透明のそれは首を伸ばし、俺達の真横に付く。


それは何かの動物のようで、顔に不釣合いな大きさの眼でこちらを見つめてくる。


やがてそれは俺達を飲み込み、俺の意識の奥深くにそれは入ってくる。


太古の山の記憶、大いなる存在の意識に飲まれ、俺はその意識に溺れる。


俺はまだ生まれて間もない赤子だ。俺は宇宙の流れのほんの小さな砂粒にすぎない。


自然に涙がこぼれ出る。その存在は俺の意識の中に入ってこようとする。


必死の抵抗も空しく、存在は俺の意識の中に入り、まるで裸にされたかのような恥ずかしさを覚える。


母親の胎中で意識を持つさらに前の、先祖の何万年もの記憶から洗いざらい見られて、恥ずかしいんだか嬉しいんだかよくわからなくなってくる。


記憶が現代に戻ると、今度は意識を奥の方まで探られる。


何を探してるんだ、やめてくれ、頼むから出て行ってくれ。


目が覚めると、外はまだ暗く、星が頭上で瞬いてる。涙が止まらない。先祖の子孫に託した思いを一度に見て思考が整理できるはずがない。


俺は慟哭した。声を上げ、遠吠えを繰り返した。悲しみが、嬉しさが、悦びが体中を渦巻いている。


涙があふれ止らない。そのまま夜明けまで鳴き続け、空が白んで夜明けを迎えるとそこで意識は途絶えた。



全身が重い。だるい、何もしたくない。


「大丈夫、ショウ」


俺はハヤトの部屋のベッドに寝ていたらしい。ハヤトは熱の出ている俺の頭に水で濡れた、固く絞った冷たいタオルを頭に乗せてくれた。


「大丈夫じゃない。かなりだるい」


「ごめん、まさか神様がそこまで人に興味を持つとは思わなくて」


「いや、ハヤトが悪いんじゃないよ。また飛んでくれる? もうしばらくここにいることにする」


「うん」



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