世界の壁
どうやら影は、魔法での戦闘訓練をした警察が退治していて、ハヤトはそれの課長してるらしい。
ハヤトはどっか抜けてるイメージがあって、そんな上下関係の厳しい組織で上に立つような人物にはとても見えない。
だけどそこら辺やるあたり、オオカミなんだなあと思った。
そういえば俺の父ちゃんも課長だから、俺もいずれは誰かの上に立ったりするのだろうか?
俺は誰かの目線より上じゃなくて、同じ目線のほうが楽しいと思うけど、それって責任を背負いたくないっていう思いもあるからなのかなあ。それが憧れのヒーローになれない原因かもしれない?
少し考えたらわけわかんなくなって、体中の痛いのがまんして後ろ脚で首を掻く。
「なあ、ハヤト。またここに来れるか?」
俺は思い切って尋ねる。
「うーん、難しいかなあ。っていうのも、ショウのいる世界へは特別な事情がない限り誰も行けないんだよ。逆も同じ。国同士の決まりでもあって、お互いの世界は干渉してはならないんだ。」
「まあ、日本の政府も滞在の許可出してるし、ビザ取得すれば居続けることはできるよ。なんならここに国籍を移してずっと暮らすこともできるよ。実際にそうした人もたくさん居る。」
「どうして行き来できないの?」
「かんたんに言えば、行き来するときは空間に裂け目を作るんだ。大勢の人がそれをやったらどうなると思う?」
「世界と世界を隔てている壁が崩れちゃうから、行き来できないってこと?」
「そういうこと。自然は破壊するのは簡単だけど、修復するのは難しい。壊れてしまったら絶滅した生き物と同じように、二度と再生することはできなくなるかもしれない。」
「裂け目を作るのは専門的な知識と、大量の魔力、魔力補助のための大掛かりな装置が必要で、トップシークレット扱いだから、そういう危機は今はないけどね。」
どうやら駄目みたいだ。どうしたらいいのかわからない。ハヤトのことが好きなのに。
「退院したらこの街を一緒に見て回ろう。おいしいものがたくさんあるよ。見せたい景色もあるんだ。」




