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もう一つの世界

うぅ……、いってえええええ! ってかまたブラックアウト落ちかよ!


俺はガバッっと起きる。


あっ、いてて……。



「あれ? 親父なんでこんなところに居んだ?」



ここ病院? うっそ、俺、動物だぞ? どうやら病院の個室のベッドで寝ているらしい。


父さんを起こすのはかわいそうだったが、ちゃんとベッドで横にならないと疲れが取れないから起こす。


前脚で、ベッドに半身を預けている父さんの背中をゆすり、ワンと一吠えする。


……まだ寝ている。科学的に証明できない事件や難事件や事例の少ない事件には人が少ないから多忙なのも仕方ない。


テレパシーで「お父さん起きて。」と言いながらゆすると、父さんは短く唸って起きる。


夕日が影になって、父さんの顔はいつもよりも老けて見えた。


オールバックの髪が乱れて、何本か毛が飛び出ている。だけど、外国人特有の体格の良さとルックスの良さで、むしろ大人のかっこよさがにじみ出ていた。


「ショウ、怪我は大丈夫か? 今痛いところはないか?」


父さんは見た目こそ外国人だけど、日本生まれの生粋の日本人だから、日本語は外国人訛りも無く、普通に喋れる。


「少し痛むけど、全然大丈夫。」


もちろん嘘だけど、マジメに答えてもメリットはないし。


「そうかそうか。」


父さんは少し険しい顔を崩して、口角が上がる。


それから頭を撫でてくれたり首を掻いてくれて、俺は素直に甘える。



どうやらもう一つの、ハヤトのいる世界にいるらしい。


それ絡みの事件なんかも扱ってるから、すぐに駆けつけてこれたとのこと。


父ちゃんスゲー。




「失礼しまーす。」


病室に見知らぬ男が入ってきた。天然パーマの黒髪で、少し伸びて余った髪をゴムで結んでる。


「あっ、お父さん、俺にも触らせて。よう! ショウ、元気?」


「誰だおまえ!」


「あれ、まだ気づかない? 俺だよ、ハヤト。あっ、本当はもっと年いってると思ってた? 来年で二十歳。エリート中の超エリート。ギフテッド? って奴。で、ショウのお父さんと似たような役職にいるわけ。」


??????


「ホラ、右腕無いでしょ。あれ? なんで泣いてるの?」


ハヤトは俺の隣に座る。


父さんは飲み物を買ってくると言って病室から出て行く。


「ここの病院は獣人専用の病院。だからその姿でいても全然問題ないよ。ああ、体温計は耳に入れるタイプだから安心して。」


体温計のくだりは動物病院での体験を思い出したのだろう。同情する。


「影は俺の部下がすべて片付けたよ。影に取り付かれた人達も大丈夫。」


ハヤトは立ち上がって真っ直ぐに俺のほうに体を向けて、姿勢を正した。


そして謝罪の言葉を述て頭を下げる。


「そ、そんなかしこまらなくても……」


俺はその時気づいた。住む世界が違うのだ。言葉は同じでも、違う世界の違う国の人。


ハヤトとはもう二度と会えなくなるのだろうか――。














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