影との戦い
ハヤトは俺の練った気の上に乗せた。
「魂は肉体とつながっているが、離れすぎると肉体を生かすことができなくなる。それから、俺の体には魔力が宿ってるから、あいつらをおびき出すエサになる。」
「大丈夫、絶対に影なんかにハヤトを渡したりしない。」
俺には誰かを守れるだけの力がある。その力がたとえどんなに小さくても、見ず知らずの人でも守る。絶対になにもしないで後悔だけはしたくなかったから。
街灯の明かりだけになった薄暗い街の広場に着いて、ベンチの上にハヤトを寝かせた。
ハヤトの体から青い光が抜けて俺の周りに纏わり付く。
案の定、影は現れたが、前よりもかなり増えていた。取り付かれた人が三人もいた。
取り付かれた人を助ける手段は思いつかなかったが、殺すことだけはしたくなくて、気で遠くに飛ばそうとしたがダメだった。
ベンチに寝ているハヤトを気のオオカミで咥えて逃げる。
影は徐々に減っていたが、取り付かれた人をどうにかする術は思いつかず、段々と体力を消耗していく。
残りは三人の取り付かれた人達になった。
近くの家の屋根にハヤトを降ろし、首にかけていた小袋から宝石を取り出し、ハヤトの胸に押し当てる。
「ありがとう、ごめん。」
俺は影の中へ飛び込んだ。俺の憧れたヒーローは、かっこよくて、強くて、絶対に泣かずに笑っていた。そしてどんな人も助けた。
俺は憧れのヒーローにはなれなかった。今までたくさん死ぬ思いしてきたのに、やっぱり死ぬのが怖くて泣いた。人を助けられる強さも無かった。
力尽きてオオカミの姿に戻る。
影が俺の中に入ってくる。世界が闇に覆われる――




