青い宝石
「少々来るのが早すぎますよ、大神シンヤさん。」
異様なほどの肌の青白さ、伸びた髪が不気味さを際立たせている。
「苦労して替わりを調達してきたんですがねえ。」
「ピエロを送って寄こした奴は別人ってことか。で、本物は誰だ?もしかして寺田か?」
「あなたが知る必要はない。今ここで死ぬんですから。」
そう言うとそいつは針のようなものを数本、俺めがけて投げてきた。
それを大神は難なくはじき返す。
「ショウを連れて逃げろ、コウジ。」
それまで寝ていたコウジは目を覚まし、竜人の姿のまま俺を抱えて飛んだ。
目の前にピエロの格好をした悪魔が数体、コウジの行く手をさえぎる。
俺も狼男になり、コウジから細身の剣をもらう。
「もう少しで殺せたのにおしいなあ。」
スーツ姿の寺田先生が悪魔の間から現れる。
「寺田先生、悪魔を使ってショウを殺そうとしたのはあなたですか。」
人の姿になってコウジが尋ねる。
「半分正解!本当は脅しのつもりだったんだよん。でも、今はもう違う。」
寺田は魔術師だった――
いつの間にか俺は泣いていた。そして魔法は終わっていた。
魔法が終わる頃には日が沈みかけていて、黄昏が世界を支配していた。
木々や建物に濃い影が伸び、闇の世界が始まろうとしている。
遠吠えをやめて目を閉じ、真っ直ぐ上を向くハヤトの胸が青白く輝いている。俺は人の姿になり、手で器を作る。
そこへ昨日の晩も手にしたあの青い、ダイヤのような形の宝石が飛び込んでくる。
手に包めるくらいの大きさの宝石は、今にも砕けそうなくらいかすかな波動しか感じられない。
それを小袋に入れて首に下げると、宝石から青い光が黒いオオカミの体を包み、目を閉じていたハヤトが起きる。
「さあ、移動するぞ。」




