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賭け碁

夏の日差しに参って神社の林の影で横になる。今日もアイツと一局打つためにここに来た。


神の使いとして祭られているオオカミ。そのオオカミと打つのだ。


なんの儀式でもなく、ソイツの退屈しのぎに打つ。俺のじいちゃんも親父もソイツと打っていたらしい。


山は大小問わず神様が住み着く。山に入ったとき守ってもらえるようにという意味を込めて碁を打つ。


今日も目の前に巨大な灰色のオオカミが現れて、巨大なイノシシの死肉を咥えている。


「よお、ショウ。なんだ?随分とバテてるじゃねえか。これ食って元気出せ。まあ勝てたらの話だがな。わっはっはっはっは!」


あいかわらず元気だ。御年一千歳。名前は結構難しいので、子供の頃親父が名付けたニックネーム「ポチ」で呼んでいる。


「うまそうな野菜だな!はやく神様に食べさせたいぞ!」


俺達はいわゆる賭け碁をする。互いの食い物を賭けて。勝ったら負けた方の食い物をもらう、実にシンプルだ。


俺は囲碁なんて好きじゃなかったけど、人間死ぬような目に会うと神でもなんでもすがるようになる。


オオカミの力を持っていると、時折走りたくてたまらなくなるのだが、街中で走るわけにもいかないので山に入る必要がある。


で、山は安全なんてどこにもないので死ぬような目に会う。


それもあって碁をときどきポチと打つ。碁を打つ場所は決まっていて、山のふもとの少し大きな神社。オオカミを祭ってて、母方のじいちゃんとおばあちゃんが神主と巫女をやっている神社の境内。


その社の裏で一局賭け碁をやる。



結局一千年の碁歴に、たかが数年の碁歴が勝てるわけもなく負ける。


それでいつものようにポチの戦利品のおこぼれをもらってその場で食べる。


山には神様だけが入れる場所があって、その中で生きているイノシシだけに大きい。片足だけでも食べきれないほどの量があった。


ポチがその巨大イノシシを平らげて、ついでに俺の残した片足も食べるのを待ってからポチと別れた。


「また来いよショウ。」


「神様のおかげで今年も豊作だからまた来るよ。」


すっかり暗くなった夜道を歩き、まばらに光り始める星を見上げながら家路につく。



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