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モコ

「ちょっと!無視しないで!お願いがあるの!わたしの犬飼ってほしいの!」


「は?」


「引越し先では飼えないから、お願い。」


金髪に短いツインーテール、自分の学校の制服をした女の子はそう言って俺に抱きついてくる。


「今わたしのモコちゃん動物病院にいるんだけど、病気だし飼い取り手がないの。」


「飼ってやれよショウ。かわいい女の子の頼みだぜ。」


「おまえら俺がこの姿で飼えると思ってんの?」


『うん。』



「はい、柴犬のモコちゃん。ちゃんと最後まで世話してあげるんだよ。」


「俺も時々見に来てやるよショウ。」


「おう……、がんばる。」


「じゃあ、お願いするね。」



モコは元気が無くて、病気に加えて怪我もしていた。


「飼い主いなくてさびしいか。俺も時々さびしくなるよ。元気になったら俺と遊ぼうやモコ。」


犬との接し方なんてわからんし、あまり犬は好きじゃない。だけど弱っていくモコを見たくは無いから懸命に看病した。


「怪我治らないなあ。やっぱり飼い主がいないとダメなのか。」


日に日に弱っていくモコはついにボールを投げても起き上がらなくなった。


「何とかならないんすか、五十嵐先生。」


「う~ん、こればっかりはどうしようもないな。」



ある晩、寝ている俺のところにモコの前の飼い主が現れた。


「いままでモコを看てくれてありがとう。」


「もういいのか?」


突然横に寝ていたモコが起き上がり、ワンと一吠えしてまた眠りにつく。


「……モコ。ごめん、俺何にもできなくて。」


「ううん。モコはきっと喜んでるよ。ありがとうショウちゃん。」


そう言って彼女は俺の頭をぽんぽんと軽く叩く。


「お前無責任だぞ。飼い主が先に死ぬなんて。残された方はどんな気持ちでいるか……」


「男の子が泣いちゃダメだぞ。……じゃあ、モコ連れて行くね。」


「バッカ、俺が泣くわけないだろ。……じゃあなモコ。」


モコは肉体から出て彼女と一緒に消えていった。元気良く彼女と走りながら。



幽霊とか妖怪の類なんかはこの姿になってからよく見るようになったが、幽霊に話しかけられたのはこれが初めてで、今ではあのことは夢だったような気がしている。


だけど、モコの墓はちゃんと彼女のそばにある。

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