どこまでも遠くへ
「えっ、マジで?」
「少なくとも私の知ってる限りでは、ワーウルフは男しかなれない。動物の姿は男の強さの象徴だから。私だって竜人の血を引いてるけど、竜にはなれないもの。」
リンの言葉に俺は尻尾を振る。
「だけど月の周期に合わせて体調の変化はあると思うわ。もしかしたらユウみたいになるかも。」
尻尾が下がる。
「無責任で済む話じゃないことは確か。でもそれはショウが気にすることじゃない。さっ、早く私の自慢の手料理を食べてっ☆」
リンの自慢の手料理は喉が通らなかったが、無理やり飲み込んだ。
退院するまでの間、彼女が付きっ切りで看病してくれた。
学校なんてすこし行かないくらいどうとでもなるわと言い張り、彼女は車内で寝泊りした。
飯の用意から便の処理までやってくれて、頭が下がる思いだった。
ようやく退院したときには梅雨が明けて、初夏の空気が街に漂っていた。
夜、肌寒さの中ユウと山に入り、無数に散らばる星を見上げて、二人で遠吠えした。
退院できた喜びと、コウジへの鎮魂の意味を込めて遠く、どこまでも遠くへ声を送る。
俺の声は誰かに届いているだろうか?
コウジにも届いていたらいいな――
流れ星が遠くの方で弧を描く。




