生きてくれて
「そうだ、早瀬!早瀬はっ……あっ、いつつつ……」
「駄目だよ動いちゃ。傷口が開いちゃうよ。」
「くそっ!リン、俺のケイタイからユウに電話してくれ。」
リンが俺のケイタイでユウに電話する。
「早瀬さんは大丈夫みたい。今ユウがここに来るって。」
「やっと起きたかショウ!昨日来た時はぜんぜん起きなくて超心配したんだぞ!」
「じゃあ私は外すね。」
そう言ってリンは車内から出る。
「ユウ!大丈夫か?怪我とかしてないか?」
「俺は大丈夫だ。早瀬も無事だ。ただ……」
「ただ?」
ユウは一瞬ためらってから切り出す
「……オオカミの力を早瀬に使ってしまった――」
「なんだと?」
「見つけた時には脈が無かったんだ、一刻の猶予も無かった……――」
俺は言葉を失い、ユウを見つめる。
ユウは目を伏せて何も喋らない。
「ユウ……」
「ごめん……」
「……元はと言えば俺が悪いんだ。ユウは何も悪くない。ユウはやっぱり、俺がオオカミの力をユウに与えたことを恨んでる?」
「そんなことは全然無い。むしろ生きてよかったと思ってる!ショウの力にもなれたし、緑川にも、……早瀬にも会えた!」
ユウは顔を上げ俺に訴えた。
「自分の気持ちに正直に向き合えば、きっと早瀬もわかってくれるよ。ユウが俺にそう思ってくれているように。」
「そうかな……」
「ユウも早瀬も生きてくれて、俺本当にうれしい!」
「俺も……うれしい!」
「ふふふ……」
「ははは……」
しばらく二人で笑い合った。なにがおかしかったわけでもない、きっと気が抜けたのだろう。
「なんか気が楽になった。ありがとうショウ。」
目に溜めた涙をぬぐってユウが言う。
「ショウ、ケガ大丈夫か?」
「ああ、ちょっと痛むけど大丈夫だ。」
「そっか、よかった~。あ、そういえばまだ早瀬に謝ってなかった。」
「なんだまだ謝ってなかったのか。俺のことはいいから早く早瀬のところに行ってやれ。」
「うん、じゃあもう行くわ。ありがとうショウ。また明日来るわ。」
「おう!また明日な!」




