闇
俺は傘を捨てて、ランスを具現化する。
狼男になり一気に相手の懐へ飛び込む。
短期決戦だ。
だが寺田は突き出したランスを避けてアッパーカットを入れてくる。
それを避けて、一旦間合いを取るため離れる。
呼吸を整え、テレキネシスを使い、動きを封じて止めを刺す。
だが目の前にカラスがあらわれて視界をさえぎられる。
すると右の腹に鈍い痛みを感じて後ろに吹っ飛ぶ。
奴がいない―
今度は右側頭部に鈍い痛みを感じて横に飛ぶ。
今の一撃で完全に右目が見えないことがわかってしまった。
「右目が見えないのか?んっん~?」
体制を整え、重心を落とし身構える。
ランスは右の死角に入られたら使い物にならない。
ランスを捨て、気を練る。
「おお、すばらしい!具現化にテレキネシス、気まで使えるなんて、どんだけ成長してんだおまえ!」
気をまとい、両目をつむり、敵の動きを気配で捉える。
右の死角から攻撃してくる!
左の拳を叩き込み、すかさず右の拳でわき腹を狙う。
が、両手に触手が絡みつく。
目を開けると悪魔がニタニタ笑いながらこっちを見ている。
おそらく服の下に悪魔を隠していたのだろう。
動揺している隙に右脇腹に鋭い蹴りを入れられ、痛みで一瞬気を失う。
狼男の姿を保てず、オオカミの姿に戻る。
さらにもう一撃腹に食らい後ろに吹っ飛ぶ。
起き上がる気力もなく、意識を保つのが精一杯だった。
血を吐き出し、口の中に錆の味が広がる。
また蹴りを腹に入れられるが、空間に壁があり、それ以上後ろに飛ばない。
「君達のせいで大事な実験体をすべて殺されたあげく、血の晩餐に出れなかったじゃないか。」
喉元を足で踏まれ、徐々に気道がふさがる。
「うぅ……くっ」
必死に空気を求めてもがく。
もう何も考えられなかった。目の前に闇が覆う。




