大雨
「ルミちゃんが電話に出ないんだけど、知らない?」
「いや、知らないけど?」
緑川の電話にユウが出る。
今日は夜にユウと街を見回る計画をしていたため、ユウを俺の部屋へ呼んでいた。
「家に電話してもいなくて。今日はお父さんのお見舞いに行くからって別れたんだけど、病院には来ていないって言うし。」
「しずく、とりあえず家から出るな。俺達が探しに行く。」
「じゃあ私も一緒に……」
「ダメだ、外は大雨だ。しずくは家にいろ。大丈夫だ、きっと俺達が探してる間に早瀬が帰って来るかもしれない。」
「……うん、わかった。川の近くは危ないから行かないでね……。」
いくつかのやりとりをした後、ユウは電話を切り言った。
ショウ、早瀬がいなくなった――
暴風雨に巻かれて二人はあっという間に濡れた。
幸い雨カッパを着ていたおかげで服まで濡れずにすんだ。
この雨の中では鼻が利かない。
濡れないために人の姿でいるため、なるべく早く早瀬を見つけたい。
なかなか見つからず途方に暮れていると、ユウから電話があった。
早瀬は建設予定のデパートの前で倒れていたらしく、首に噛み跡があるが、生きているとのことだった。
俺は無意識のうちに歯軋りをしていた。
もう、これ以上誰かが苦しむ姿なんて見たくないのに。
デパートに向かう途中の道に、人影が見える。
あれは――




