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狗神黒の推理  作者: 狗神黒
学園ラブコメ編
23/33

来ヶ谷の暇つぶし

翌日。

昼休み。

来ヶ谷は僕たちのクラスへやって来た。

来ヶ谷のクラスは隣りだ。

「教授に聞いたら入部させてもらえることになった。よろしく」

僕は来ヶ谷恭介を観察する。

濃いブラウンの髪と目。

左利きらしく左手の中指にペンだこがある。

どこか僕と似た『法螺吹き』のようなオーラを漂わせている。

花咲とは別のベクトルで嫌な奴だ。

同族嫌悪だ。

「でさ。今度の連休にオレの実家に来ない?」

来ヶ谷はなぜか僕の机に弁当を置き、食べ始めた。

「来ヶ谷と僕って友達だっけ?」

白々しいと思いつつ質問する。

来ヶ谷は苦手で嫌いだ。

仲良くなれそうにない。

「オレら同じ大衆心理研究部の部員だろ。ダチに決まっている」

はー。

そーですか。

僕は購買のパンを食べながら来ヶ谷を無視することに決めた。


そして、六月最後の連休。

僕らは来ヶ谷の実家に来ていた。

「親とか親戚は熱海あたみに旅行に行っているから、オレ一人なんだよ」

来ヶ谷はどうぞ、と家の中に案内する。

「!?」

玄関に見慣れない物があった。

マネキンだ。

普通、服を売っている店でしか見たことのない物に違和感を覚える。

「あー、これ、これはゲームに使うんだよ」

来ヶ谷がそう説明する。

改めて玄関を見る。

四月くらいから放置されてそうな鏡餅が二つあった。

ただ、片方は下の餅が無くなっていた。

「ああ、これ? 親戚が食べたんだ」

来ヶ谷はそれぞれの部屋に僕らを案内する。

地下室もあり、ビールやワインが置いてあるそうだ。

「さて、気付いたと思うけど……」

来ヶ谷がそう切り出す。

気付いた?

何を?

狗神と花咲が同時に言った。

「「間取りがおかしい」」

「正確だ」

花咲は部屋の外に出る。

そして、部屋と部屋の間の壁に触れた。

「壁が異常に長い。おそらく、隠し通路かなにかがあるね」

隠し通路?

そんなものが普通、家にあるのか?!

来ヶ谷は頷いた。

「隠し通路はあるよ。部屋の姿見が入り口になっているんだ」

来ヶ谷はゲームをしよう、と言った。

「ゲーム?」

榎本が聞き返す。

「そう。探偵と殺人鬼の知能戦だよ」

来ヶ谷の話を簡単にまとめると、

探偵役と犯人役、被害者役に分かれる。

探偵役以外は今回の事件のネタバレを書いた紙を手渡される。

死んだら隠し通路を使いマネキンと入れ替える。

隠し通路はマネキンとの入れ替え以外には使わない。

全ての事件が終わったあと、探偵役は犯人を見つけ出す。

「探偵役は狗神、榎本、春日野だ」

来ヶ谷はそう言って逢魔たちに紙を渡す。

「なるほど。これはちょっと思いつかないな。来ヶ谷、これはすごいね」

花咲が素直に来ヶ谷のトリックに感心したことを伝えた。

「なんか殺され方が酷い人もいるわね」

江迎が嫌そうな顔をする。

「じゃあ、始めようか。オレの完全犯罪を」


俺は来ヶ谷に初めて会ったとき、同類の匂いを感じた。

殺人をした者だけが持つ、微かな血の匂い。

殺し合いをしたい。

純粋にそう思う。

だが、なんの因果か今回は俺が探偵役だ。

せいぜい楽しませてくれよ。


じゃあ、ゲームを始めるよ。

そう来ヶ谷は言って、僕たちは来ヶ谷の暇つぶしに付き合うことになった。

「わたしが探偵役か。似合わないわね」

榎本はそう言って部屋に入る。

僕と榎本、花咲と狗神、江迎と逢魔、宮川と来ヶ谷は相部屋だ。

「僕と花咲が相部屋ならいいのにね」

何気なく言った。

男同士なら気兼ねなく着替えや話が出来るからだ。

「……わたしと一緒はいや?」

榎本がつぶやく。

僕はこういうとき、どう反応すればいいんだろう?

分からない。

だから、日和ひよってみる。

「榎本。夏休みになったら二人で旅行にでも行かない?」

榎本の顔が赤くなる。

何を想像したのか、僕は少し分かる。

「二人で旅行?」

「うん」

榎本とは付き合えない。

だけど、親友としてなら……。

それが僕が榎本との間につけた距離だ。

僕は榎本の気持ちには応えられない。

「榎本。行きたいところとかある?」

聞いてみる。

榎本はどこでも、と応えた。

「じゃあ、榎本が……」

言いかけた瞬間、ドアが開く。

花咲だった。

「遥! 榎本さん! 料理を手伝ってくれないかな?」

台所に行くと、黒煙が立ち込めていた。

「ゴホッ! ゴホッ!」

むせながら台所に着いた。

宮川がフライパンを手におろおろしている。

「春日野。これどうしよう?」

フライパンには卵焼きらしきものの残骸がこびりついていた。

いや、言い換えよう。

これはダークマターだ。

人の食べるものではない。

「江迎、榎本! 料理を手伝ってくれ」

僕ら三人以外を台所から追い出す。

「さて、何を作ろうか?」

食材はある。

だが、時間がない。

「じゃあ、こういうのはどう?」

江迎がある提案する。

「それにしよう」

「そうね」

僕らは江迎の提案に賛成した。


一時間後。

「まずはオムレツだよ」

みんなに料理を出す。

江迎の提案とは作る時間の短いものから出していき、並行して料理を作るというものだった。

もちろん、僕らの分はちゃんと残してある。

「おいしー」

宮川が嬉しそうな顔をした。

実はオムレツを作ったのは僕だ。

花咲や宮川のように美味しそうに食べてもらえると作り手として冥利に尽きる。

「次の料理。出来たわよ」

江迎が次の料理を持ってくる。

入れ替わりに僕が台所に入った。

「遥。野菜洗って皮はいで」

「了解」

タマネギやニンジンを洗い、皮をはいでいく。

そうこうしているうちに料理は全て作り終えた。

僕らが自分たちの分の料理を持ってくると、来ヶ谷がジュースの入ったビンを取り出した。

封はしていない。

「みんな、ジュースを飲もう」

飲まないか?

ではなく、飲もう。

明らかに怪しい。

「じゃあ、ジュースを注ぐぞ」

来ヶ谷は全員のコップにジュースを注ぐ。

ビンは空になった。

コップが配られたのはジュースを注いだ順だ。

最後にジュースを注がれたコップを持ったのは宮川だ。

「乾杯!」

「「「乾杯!」」」

来ヶ谷のノリに合わせてみんなが乾杯する。

そして、ジュースを飲んだ。

「辛っ!!!」

宮川が悲鳴をあげた。

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