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狗神黒の推理  作者: 狗神黒
学園ラブコメ編
22/33

大衆心理研究部

花咲が退院した日。

僕の家で退院祝いをすることにした。

僕は榎本と共に買い出し、狗神と宮川、そして何故か江迎も退院祝いの料理を作るそうだ。

「あ、こっちのニンジンの方が安い」

榎本がさながら獅子のように店を走り回っている。

「なんだかなぁ」

あの告白からもう一週間近く経つ。

榎本や退院した花咲は普段通りに見える。

しかし……彼らの心には傷がある。

それは悲しみであったり怒りであったりする。

そして、その傷をつけたのは僕だ。

「買い物が終わったよ」

マイバックに大量に入れられた食材やお菓子を見て僕は言った。

「あの。こんなに食べたら太るよ」


「痛てて」

榎本の平手打ちで今も腫れている頬をさすりながら台所で野菜を洗う。

「まぁ、平手打ちされるようなことをした僕が悪いんだけどね」

僕は嘘つきだ。

法螺話ほらばなしを聞かせる道化だ。

だからさ。

これからはもっと気持ち悪い話をしよう。

君は聞いてくれるかい?

僕のはなしを。


「今日はボルシチに狗神の提案でチーズバーガーと江迎のミニケーキと、遥の作ったチーズカレーだよ」

榎本が僕たちに皿を配る。

「はい。江迎の分」

あの告白から、江迎と榎本は仲良くなった。

傍目からはそう見える。

僕が狗神に告白したことで、二人が対立する理由が無くなったからだろう。

だが、江迎が何もしないのが逆に恐い。

食べ物に毒は入ってないよな?

「じゃあ」

手を合わせる。

「「「いただきます」」」


「遥。カレーおかわり」

「はいはい」

空の皿を持ち、カレーを盛って榎本に渡す。

「なんか青春がしたい」

唐突に榎本がそうつぶやいた。

花咲がうーんと考える。

「部活とか?」

即座に否定される。

「今から入れる部活はないって」

僕は何気なくつぶやいた。

「作れば?」


翌日。

放課後。

僕らはみんなが去った教室にいた。

「というわけで、大衆心理研究部を作ったぞー!」

「すごいねー!」

花咲と榎本がハイタッチをする。

「で、大衆心理研究部とは?」

狗神が肝心なことを聞く。

「それは、愚民共の心を研究し、いかに効率よく搾取するかを考える部活よ」

「それ、今の国会と変わらないんじゃ?」

宮川が的確にツッコミをいれる。

「で、通ったの?」

普通、そんな部活の設立なんて出来ないだろう。

「教授に頼んだら、オッケーしたよ」

教授か。

正確な名前は生徒の誰も知らない。

ただ、元は大学の教授だったことから、生徒には教授と呼ばれている。

料理を食べるのが生きがいで、毎日炊飯器を職員室に持ち込んでご飯を炊き、おにぎりを二キロ以上食べている。

ただ、教授の授業は面白い。

教授は一人で複数の教科を教えており、そのどれもが独創的で面白い。

「顧問は教授で、部費は生徒会から一人につき千円貰った」

まて。

部活は一人じゃ出来ない。

最低でも六人必要なはずだ。

つまり、

「僕らの名前を勝手に書いたの?」

「うん」

榎本は悪びれることなく言った。

デジャヴだ。

江迎が毒を入れた時と同じ感じがする。

花咲が質問する。

「で、部活のメンバーは?」

榎本はその質問には応えず、教室のドアを開ける。

「じゃーん。逢魔愛さんです」

「「「……」」」

反応に困る。

眠たそうな逢魔さんはふわぁあとあくびをした。

「逢魔愛です。知っていると思いますがクラスメイトです。逢魔と呼んで下さい」

逢魔さん。いや逢魔は眠たそうに自分の机に座る。

「ここにいるメンバーが部員です」

僕。

榎本。

狗神。

花咲。

江迎。

宮川。

そして、逢魔。

「つまり七名で予算は七千円か」

僕は気になっていることを聞いた。

「なぜ逢魔を部員に?」

榎本はとびきりの笑顔で言った。

「部活に入ってなくて部費が増えるから」

後半が本音だろう。

それにしても、よく説得したな。

いや榎本がいじめっ子だからか?

「そして、ここにある七千円を宮川に渡します」

七千円を封筒から取り出すと宮川に手渡す。

宮川はキョトンとしている。

「FX取引でこれを一億円にして」

FX取引。FXというのはForeign Exchangeの略称で、日本語で言うと外貨為替証拠金取引だ。

簡単に説明すると、二つの通貨を選んで、その上がり下がりによって利益を出していく取引だ。

さらにFX特有のレバレッジを使用することによって、たとえ資産が百万円しか無かったとしても、その十倍から数十倍もの高額取引をすることができる。

だが、七千円を一億円にって、無理だろ。

「分かったよ」

「え!?」

宮川は七千円をサイフにいれると、何事も無かったように榎本と話し始めた。

仕方なく僕は逢魔と話すことにした。

「逢魔さん。初めまして」

「初めまして。逢魔でいいですよ」

逢魔は眠たそうな顔であくびをした。


その後、僕らが帰り支度を始めたとき、彼はやって来た。

今日のドアが開く。

「初めまして。来ヶくるがや恭介きょうすけだ。大衆心理研究部に入部したいんだけど、いいか?」


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