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狗神黒の推理  作者: 狗神黒
学園ラブコメ編
21/33

予知能力者

僕と狗神はあの日から付き合うようになった。

といっても学校での会話が多少増えただけだが。

「春日野さん。この服はどう思います?」

狗神がファッション雑誌で今流行りらしき服を指差してきた。

「うん。狗神に似合うと思うよ」

そうですか。

と、狗神は言った。

「狗神。制服に着替えたんだね」

狗神は今日、初めてこの学校の制服を着て登校してきた。

まだちょっと早い気がするが、夏服だ。

ふとももや二の腕が眩しい。

「似合いますか?」

「うん。似合っている」

やっぱり狗神には喪服のような黒い服より女の子っぽい服が似合う。

「そう言ってもらえると嬉しいです」

狗神がはにかむ。

可愛い。

思わず見惚れてしまう。

「こら、変な妄想をするな色情魔」

何時の間にか後ろにいた榎本にプロレスの技をかけられる。

「痛い、痛い! ギブアップ!」

「まったく……」

榎本から解放された僕は腕をさすりながら榎本の方を見た。

「スカート短かくない?」

狗神はかなりスカートが長めなのに対して、榎本はパンツが見えそうなほど短かい。

「だから、変な妄想をするな!」

榎本の回し蹴りを喰らった。

その時に見えたが、榎本は短めのスパッツを履いていた。

まさに、天国と地獄だ。

僕は一時限目の開始まで気絶していた。


俺は、ある噂を耳にした。

「予知能力を持っている子がいるんだって」

「知っている。わたしたちのクラスのアイでしょ」

「そうそう。すごいよね。予知能力」

俺は購買で買ってきた豚カツサンドを食べながら宮川に聞いた。

「予知能力って信じるか?」

宮川は即答する。

「予知能力はあり得ないです」

俺は噂話を宮川にした。

「コノハは信じるの?」

宮川が逆に聞いてきた。

予知能力か。

「信じない。必ずトリックがある」

「だよねー」

宮川はアイと名乗るペテン師に勝負を挑むことにしたらしい。


昼休み。

逢魔おうまあいさん。私と勝負してください!」

愛と呼ばれた少女は眠そうな顔で聞き返す。

「勝負?」

「そうです。私があなたの予知能力のカラクリを解いてみせます」

逢魔は眠そうな顔のまま、宮川に宮川の住所を聞いた。

「わたしがそこに手紙を出します。そこには未来のことが書かれています」


それから三日後。

「コノハ。見てください」

宮川が俺に一通の手紙を見せた。

消印は一昨日になっている。

「これが昨日来ました。そして、

昨日の新聞のニュースが書かれているんです」

なるほどね。

未来を予知する手紙か。

なかなか面白い。

「まあ、たぶんトリックは簡単だけれどね」

「分かったんですか?!」

宮川が詰め寄る。

俺はトリックを教えるかどうか迷う。

「ERプログラムを受けたのなら、自分で考えろ」

「えぇ~」

宮川は逢魔のトリックを解こうと首を傾げ、考えている。


翌日。

「まだ分からないのか?」

宮川はまだ悩んでいた。

「コノハは分かったんですか?」

分かったというか。

手紙で予知した時点で半分以上ネタはバレているのだが。

「放課後。逢魔に再び挑戦しろ。それでトリックは分かる」

「はいっ!」

ああ。

トリックの解明なんて面倒だ。

けれど、まあ、仕方ないか。

乗りかかった船というやつだ。


さぁ、答え合わせを始めよう。


放課後。

宮川はまた逢魔に勝負を挑んだ。

「いいですよ」

逢魔は了承した。

それから一日経つ。


夜。

俺は宮川と共にマンションの外からマンションを監視していた。

「カップラーメン。食べる?」

宮川がお湯を入れたカップラーメンを食べる。

「美味しいな」

宮川はパアッと笑顔になる。

「新商品なんだ。美味しいよね」

「そうか。新商品なのか」

宮川がじーっと見つめてくる。

「なんだ?」

いやいやと宮川は照れ笑いをした。

「コノハも人間なんだなーって」

「俺はただの人間だよ」

そう。

花咲や狗神と同じ、人間だ。

「あっ!」

宮川が小さく声をあげた。

小柄な人影がマンションへ近付いていた。


「……」

小柄な人影の手紙を入れようとしたその手を、ガシッと掴む。

「……あ!」

「やぁ、逢魔。郵便配達のバイトか?」

「……」

逢魔が何も言わないので、俺がトリックを話す。

「逢魔はまず、自分宛に鉛筆で手紙を書く」

「……」

逢魔は無言だ。

「そして、送られた手紙の鉛筆で書かれた住所を消し、新たにペンで相手の住所と予知の内容を書いて相手に直接自分で届ける」

これで消印を一日ずらして届けることが出来る。

これが予知能力のトリックだ。

「正解です」

逢魔は負けを認めた。

「さて、取り引きをしようか」

「取り引き?」

逢魔は首を傾げた。

「俺と逢魔はここで出会っていない。また、宮川もトリックをバラさない。その代わり俺と会ったことを秘密にしろ」

逢魔は黙る。

そして、言った。

「選択肢は、ないですね」


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