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狗神黒の推理  作者: 狗神黒
学園ラブコメ編
20/33

「僕は、君が好きです。狗神黒」

「僕は、君が好きです。狗神黒」

告白した。

僕の思いを。

狗神はうつむく。

「私は、あなたのことが……」


『好きです』


そう聞こえた。

「あーぁ。わたしは失恋しちゃったのか」

榎本が髪をわしゃわしゃとかく。

「遥。わたしも告白していい?」

「うん」

これはけじめだ。

榎本と僕が前に一歩踏み出すための。

だから、僕は応えなければならない。

「わたしはずっと君が好きです。春日野遥くん」

ごめん。

榎本の気持ちには応えられない。

「ごめん。僕は、狗神が好きなんだ。だから、榎本の気持ちには応えられない」

榎本は憑き物が取れたような清々しい顔で言った。

「わたしたち、親友だよね?」

あぁ。

そうだね。

榎本が心の中で泣いているのが分かる。

だけど、その涙を見せないでくれている。

僕の決意が揺らがないように。

「ああ。僕らはずっと、親友だ」


狗神や榎本と別れた後、僕は病院に向かった。

「花咲。起きているか?」

花咲の病室の前でドアを軽く叩く。

コンコン。

「入れよ。裏切り者」

花咲のよどんだ声がして、僕は病室に入った。

「花咲。怪我は大丈夫か?」

花咲は頭に包帯を巻いていて、点滴をしている以外は特になにも変わったところはない。

「頭をコンクリートブロックかなにかで殴られたせいで記憶が一時間ばかりない。それ以外は健康だよ」

失った記憶は一時間か。

なら、覚えているな。

「花咲。約束を果たしにきた」

「あぁ、そうだな。とりあえず病室から出よう」

病室から出て、広い場所へ移動する。

「榎本はお前に告白したか?」

花咲は点滴を抜く。

「うん」

そうか、と花咲は言って、構えた。

「告白にどう応えた?」

分かりきっていることを聞く。

だけど、確認しておきたいのだろう。

「断わったよ」

花咲ははぁー、と息を吐く。

「僕は榎本のことが好きだ」

「知っている」

花咲は最初から榎本のことが好きだった。

簡単に想像出来る。

そして、花咲は怒っている。

「僕が榎本を悲しませたことを、怒っているのか?」

「ああ」

もう言葉は要らない。

花咲は僕に殴りかかった。


「まったく! 病院内で喧嘩は止めて下さい」

看護師さんの説教を聞く。

僕と花咲はお互いにあざだらけだった。

まあ、圧倒的に僕の方が多いが。

花咲が本調子なら僕は一発も花咲に当てられなかっただろう。


看護師さんの説教が終わり、僕は花咲と面会時間ギリギリまで話しあっていた。

「殴ってスッキリした。だからこれで今回のことは全て水に流す」

「ああ」

「僕はお前を許すよ。遥」

花咲は笑って言った。

本当に許しているのか、その仮面のような笑顔からは分からない。

「だから、狗神さんを幸せにしてやれよ」

言われなくても分かっている。

「じゃあ、またな。花咲」

「ああ、またね。遥」

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