BROTHER
グロありです。気を付けて
『―――へぇ―――』泣いている僕に優しく手を差し伸べる。『―――――そっか』懐かしい声、顔、そして記憶。『―――キミ、優太っていうんだ―――』ああ、そうか、君は。
ふと目が覚めた。
「…さむ!」
4月の夜はまだ寒い。僕は掛け布団を蹴飛ばし、腹を出して寝ていたらしく、体は芯から冷え切っていた。布団を直して中に入ると、右手で目覚まし時計のボタンを押して時間を確認した。
「3時か…」
いつもの起床時間にはまだ4時間もある。布団の中でモゾモゾとしていると、すぐに睡魔に襲われた。
『ねえ、優太君、一緒に遊ぼ?』振り向くとさっきの男の子が立っていた。『一緒に遊ぶ人、この指とーまれ!!』彼は人差し指を立てて僕の顔の真ん前に持ってくる。当然のように僕はその指を右手で握った。瞬間、グニャリと潰れる感覚が右手いっぱいに広がった。反射的に握っていた右手を見る。原型を残さない彼の指と思われるものは、まるでスライムのようにドロドロと床に落ちた。「うあっ」立ちすくむ僕の下に広がっていたのは一面の赤。肉塊とそれに混じって内臓と思われるものも大量にぶちまけられた床を見て吐き気が僕の感情を支配していた。何で?どうして?こんなことって…。『何で?どうして?だと?』突如聞こえた声に僕はギョッとして振り返った。深くフードを被った男がそこに立っていた。その男は僕に近づいてきて、耳元で囁いた。
『そ…お………だ…わ……えじゃ………』
……え?聞き返そうと思った瞬間、僕の体はふわりと軽くなった。「………ろ」かすかに耳元に聞こえた言葉は池の波紋のように消えていった。「……てよ」まただ。何となく聞いたことのある声だ。
「起きろってこの―――んぶぅ!」
左足に硬いものが当たった。
「んぅう?」
眠い目を擦って開くと、そこには鼻に手を当てた陽ちゃんがいた。
「陽ちゃんおはよぉぁあ、ふぅ…なにやってんの?」
陽ちゃんはあくび混じりに挨拶する僕を睨みつける。
「遅刻しそうな弟を心配して起こしてやったのに、…お前ってやつは、この間も」
ああ、始まったよ…。滝澤 陽一(14)は僕と1つ歳の離れたお兄ちゃん。頭も良くてスタイルもいいんだけど、とにかく話が長い。
「あ~はいはい、愚痴なら後で聞いてあげるから」
陽ちゃんの言葉を遮り、ベッドから身を起こして背伸びをする。陽ちゃんは呆れ顔で溜息を吐いた。
「じゃ、俺外で待ってるからな。早くしろよ」
早くしろよ、と言われても…。とりあえずパジャマのまま一階に行くと、料理をしているお母さんがいた。
「優太、朝ご飯は?」
「食べてる暇ないよ、お母さん」
なんて悠長な人だろう…と、少し呆れながら脱衣所へ向かう途中、ふと洗面台の鏡が目に入った。鏡に映るのはちっちゃくて、丸々してて、幼さが全然抜け切れていない自分の姿。溜息を一つ吐いてからパジャマを脱いだ。パジャマを脱いだ瞬間、様々な個所から沁みるような痛みが走る。
「…っ!!ぐぅぅ…」
毎日、着替えの時とお風呂の時だけは慣れない。傷と蚯蚓腫れは体のところどころにあり、お腹や腕にはたくさんの痣がある。涙ぐみながらもさっさと着替えて痺れを切らしている陽ちゃんの元へ走った。
「お、今日は早いな。これなら走らなくて済みそうだ」
陽ちゃんが「早く行こう」と僕を促すと僕は元気よく「行ってきます」と叫んだ。奥から小さく「いってらっしゃい」とお母さんの声が聞こえると同時に勢いよく家を飛び出した。少し遅れて陽ちゃんも「行ってきます」をして僕の後を追いかけた。
下手くそな小説読んでいただいてありがとうございます。
ナイソンです!! どもども。
BROTHERの最初の方だけUPしてみました。
お気に入りなどしていただけると助かります。