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一夜夢の正論を

作者: 天地 とんぼ

 ボクは逃げていた。ボクは精一杯に両腕を振り、顔を左右に揺らしながら、必死に“生きよう”と懸命に走った。

 後ろから迫るものは“闇”だ。真っ黒で、何も見えない闇が、ボクを飲み込もうと追い掛けてくる。逃げても逃げても、その闇との間隔は一定に保たれていて、立ち止まっても平気そうなのだが、飲み込まれる恐怖から、ただ頭は

「逃げろ」

と繰り返す。

「もう駄目だ」

足と脇腹が悲鳴を上げ、ボクは目をつむった。


 ボクは目を開けた。そこはいつもと何ら変わりない空間だった。ボクの部屋だ。ベットが軋みながらボクを支えていた。まだ薄暗く、時計はいつも起きる時間より3時間も前を指していた。

 部屋を取り囲む空気は、どんよりとしていて、先程の夢を思い出させた。思いきり首を振り、忘れようとした。

 しかし、一度思い返してしまったものは、自然と頭に浮かんでしまう。真っ黒な闇、迫り来る闇、逃げても逃げても追ってくる闇。

 ボクは震える体を両手で抱き締めながら深く溜め息をついた。冷や汗がバジャマの中をつたう。心臓がドクドクと耳に響き、周囲の静けさの中で、たった一人だけの生きている証の様だ。そう、まるで世界中に一人だけ。

 ザワザワ…。突然、闇が動いた。そうだ、ボクは…。

ー…この闇から逃げていたんだ。

 それからまた、逃げだすのだ。そして、眠りにつき、起きると闇に追われる。その繰り返し。

 薬に侵された体は、悲鳴をあげている。そして今日も鬼ごっこが始まる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 幻覚症状ですね。薬は怖いです……。
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