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鈍感と策士  作者: 古時
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私は今、熱い視線を向けられております。


ええ。それはもう射殺されそうなほどに。


ガラスのハートはその熱に耐えれずに悲鳴をあげています。


…実際は悲鳴をあげるどころか異常なほどに心拍数が上昇し、身体中を冷や汗がたらたらと流れております。


こういう時こそ、人は悟りをひらくものです。


嗚呼。先程からイケメンからの熱い視線もとい、お前だれだよ俺の女にさわってんなよオラ的な視線がよりいっそうつよまりました。


このような場面を「修羅場」というのですね。あははははは。

…えーと、私はいったいどうすればいいのでしょう?



「…そいつをこっちによこせ、小僧。」

はい、よろこんで。


…と言えたらなんぼ良かったでしょうか。


私は目の前の美女をちらっと伺った。


(助けなかったらコロス)


はい。心なしかそのような物騒な言葉が聞こえた気がします。

(ななな何か言わなければ…ででも何言えばいい!?…ホントどうしよう…)


ええい、こうなったらあれだ、母の真似をしようっ。

そうだ、それがいい。

…できるか知らないけど…


「…あ、あの、何があったか、他人である私には分かりませんが、人目から見て大きな騒ぎになる前に、ここはいったんお引き取りください。

何かあった場合、私が警察を呼ぶ前に、ここのアパートの大家さんのお説教がまってます。それでもお引き取り頂けない場合は、どうぞ、正座五時間および足裏つっつきの刑を受けるがいいです。そ、そもそも…」


女性に対して乱暴は…とか、男女は尊重しあうのが…とか、けんかするほど…とか、相手が明らかにイライラするくらい長々話していく。


そのうち、相手がもういい帰るとなるまで続けるのだ。


そして私がついに話の内容に嘘っぱちのうんちくをならべたころ、男はもういい、と言った。

(お?私にもできた?)


私の親友からみたらきっと「帰ってくれるの?」的な期待に満ちた目をしている、と苦笑いされるだろう。


しかし、それでもかまわない!私の腹の虫はもう限界なのだ。「…今日はいったん引くが、次はないと思え…。」


イケメンが女神さまをにらみながらそう言い捨て、去っていくまぎわに私のほうをみて、バカにするような、ニヒルな笑みを残していった。


…勝ったはずなのに負けた気分になりますね。あははは。


すると、緊張がとれたのか腹の虫が鳴き声をあげた。


(うー、減りすぎて気持ち悪い。)



「ぷっ」


ん?今、笑い声が聞こえたような…


「あははははっふふっふははっ…」


目の前の女神さまが、腹をかかえて爆笑しております。


それでも神々しく見えてしまう私は末期でしょう。


女神さまの笑い声がすみきった青空へ響き渡りました今日この頃でございました。

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