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食べ物の恨みは恐ろしいが、女の嫉妬は3割増し恐ろしい。というのは、本人の見解である。
朝日がカーテンの隙間からさしてくる。眩しくて、うっすら目をあけた。はじめに目についたのは、白い天井。あれ?私の家は木目の茶色いものだったはず。一瞬、疑問が浮かび、ああ、そうだったと思い出す。
「今日から一人暮らしか…」
そうだ。天井が違うのも、ここが家ではなくて、借りているアパートであるからだ。
胸中に、新しい生活への期待と一人で暮らすことへの不安がたちこめる。
「今日は、日曜日。…明日から大学に通うのか。」
ベッドから這い出てシーツを引っ張りだし、洗濯かごへと放り込む。ベッド際の窓を開けて、空気が流れるのを感じる。太陽は空高く、青い中でさんさんと輝いていた。その位置から、だいたい今がお昼時と判断する。右手にある時計を見ると、12時45分。
ふーーと、息をはく。
「目が覚めてきたらおなかが減った…」
越してきたばかりなので、冷蔵庫の中身は当然なんにもない。金曜日と土曜日は、入学式などもあり、ほとんど外食ですました。もし母がいたら、食べきれない程の食料を持たせてきたかもしれないが、幸いにも海外主張で、帰ってくるのは来年の秋になるそうだ。
その頃には、大学や生活に落ち着きがつくと思う。が、私には好都合でも彼女は違うらしく、電話の向こうでは嗚咽と駄々をこねるように手を机に叩きつける音が聞こえた。
そうした姿を想像すると思わず口元が緩む。我が母ながら、とても可愛い人なのだ。まぁ、私はほとんど父親似なのでまったくもって可愛くないが…。似たと思うのは髪位かなと思う。鏡に映るのは、日本人ですと言わんばかりの真っ黒でクセがある私の髪。女らしさがあまりうかがえないひょろっと縦に無駄に長い体つき。骨太でたくましい手足。顔は…まぁ、父親に免じて文句は言うまい。肌は不健康そうな感じで、せめて普通が良かったと贅沢をいいたくなる。
何気にコンプレックスだらけだが、そこは前向きにいこー。
そんなこんなで自分の体を観察しながら?ざっと身支度をすまし、買い物袋と財布をとり、玄関に向かう。
借りている部屋は二階の一番奥に位置している。手前から数えて五番目だ。
引越しの挨拶とかってどうするんだろうと考えながら鍵を閉める。
階段を降りようと下を向いたとき、知らない男女が上がってきた。
最初に目に入ったのは男の方なのに、私は女の方に一瞬釘付けになった。
(‥‥‥‥‥女神さまがいるよ…)
男の方は、175?ある私よりも少し大きく顔面がやけに整っていた。
しかし傍らの物凄い美女をその秀麗な眉をゆがませて見つめ、女神さまの方も負けじと鋭い眼光をとばしている。
やっぱり美女にはイケメンかーなんて思いながら、完璧に観客気分でぼーっとしてたら、女神さまと目があった。
…目があった?
「助けてっ!」
ふわっと香るなんかいい匂いにうっとりしている間に、なんと、…私の腕の中には女神さまがいらっしゃいました。
(…もしかして、修羅場?)
ぼーっとしていたことに初めて後悔した。
初めて投稿します。暇がつぶせたら何よりです。頑張って続けたいと思います。拙い文章覚悟の上で閲覧なさることをおすすめします。