アホ毛が揺れる
アイデアを全部aiにまとめさせた。
第1話 人の頭にはアホ毛が見える
俺は最近、俗に言う超能力とか魔眼やらといったものに目覚めたのかもしれない。
当然、右腕は疼かない。
人には見えないものが見える――と言うと、途端にスピリチュアルな胡散臭さが出てしまうが。
なんと言えばいいのか。
そう。
人の頭の上にアホ毛が見えるのだ。
我ながらアホっぽさのある能力だと思う。
最初は疲れてるのかと思った。
だが数日観察しているうちに、どうにも妙な法則性がある気がしてきた。
右向きのアホ毛が見える相手とは、なんとなく上手くいく。
逆に左向きだと、地味に嫌なことが起きる。
ほんとに地味だ。
体育で俺のとこだけボール飛んできたり、買ったばかりのパンを落としたり、その程度。
だからこそ逆に気になる。
偶然と言われれば否定できないラインなのだ。
ちなみに今のところ、アホ毛は全員一本だった。
右か左か。
どっちかだけ。
だから。
「……なんだあれ」
教室の窓際で欠伸してる女子を見た瞬間、思わず声が漏れた。
右。
左。
ぴょこん、と一本ずつ。
仲良く並んでいる。
意味が分からない。
「ん?」
女子――朝倉ひまりが、こっちを見る。
「どうしたの?」
「……いや」
頭を見る。
やっぱりある。
左右一本ずつ。
しかも妙に元気。
「……気のせいか」
「?」
首を傾げる。
左が揺れて、右も揺れた。
もう意味が分からなかった。
第2話 継続観察対象
朝倉ひまりは、妙に危なっかしい。
「あっ」
廊下でプリントをぶちまけ。
「うわっ」
階段でこけかけ。
「あれ、財布ない……あ、持ってた」
五秒後、自分の手の中から財布を発見していた。
ちょっと心配になるレベルである。
「お前、大丈夫か?」
「えへへ」
「笑って誤魔化すタイプか……」
散らばったプリントを拾ってやる。
「ありがと、神崎」
へらっと笑う。
右が揺れる。
でも左も揺れている。
意味が分からない。
放課後。
俺は机に頬杖をつきながらノートを見る。
【観測記録】 ・右傾向→なんか良い ・左傾向→なんか嫌 ・例外個体確認 ・左右同時発生 ・継続観察必要
自分で書いててアホみたいだと思う。
でも気になるものは仕方ない。
「神崎、まだ帰んないの?」
「うおっ」
顔を上げると、ひまりがいた。
「びっくりした……」
「なんか難しい顔してた」
ひまりが俺の机を覗き込もうとする。
慌ててノートを閉じた。
「見んな」
「えー」
「プライバシーだ」
「怪しい」
ぐいぐい距離を詰めてくる。
近い。
近くで見ると、やっぱり左右両方ある。
しかも今日はなんか右が元気な気がする。
「……今日機嫌いい?」
「へ?」
「いや、なんでもない」
そんなことを考えている時点で、もう検証として終わってる気もした。
第3話 左っぽいやつ
文化祭準備期間に入ってから、俺は朝倉といる時間が増えた。
いや、別に好きとかではない。
観察だ。
あくまで観察。
「神崎ー」
「なんだ」
「これ開かない」
ペットボトルを差し出される。
「自分でやれ」
「やったもん」
「……貸せ」
受け取って開ける。
「おー」
「はい」
「やさしー」
「うるさい」
最近、なんかこういうのが増えた。
鞄が開いてれば閉めるし、プリント落とせば拾う。
もう半分反射である。
「神崎ってさ」
「なんだよ」
「ちょっとお母さんっぽい」
「嬉しくねぇ……」
ひまりが笑う。
右が揺れる。
でもその直後。
「きゃっ!?」
コードに足を引っ掛け、ひまりが盛大によろけた。
「危なっ」
咄嗟に腕を掴む。
勢いのまま、ひまりがこっちへ倒れ込んできた。
近い。
「……」
「……」
数秒固まる。
ひまりが顔を赤くした。
「ご、ごめん」
「いや別に」
離れる。
左が揺れていた。
……やっぱ左なんだよなぁ。
こいつといると、平穏な日常がどんどん壊れていく。
でも。
「神崎」
「ん?」
「ありがと」
へにゃっと笑う。
右も揺れていた。
ほんと意味分かんねぇ。
第4話 右になれ
文化祭当日。
朝倉ひまりは、やっぱり朝倉ひまりだった。
看板を倒し。
ジュースをこぼし。
最後にはコードに引っ掛かって、教室の電源を一瞬落とした。
「ごめんなさぁい……」
しょんぼりしている。
左向きのアホ毛がぴょこんと揺れた。
やっぱり左だ。
こいつといると面倒ごとばかり増える。
疲れる。
振り回される。
平穏な日常なんてなくなる。
でも。
それが嫌じゃないと思ってる自分がいた。
「神崎?」
「……いや」
気づけば、手が伸びていた。
本来、アホ毛には触れられない。
見えるだけだ。
でも何故か、その時は触れられる気がした。
左へ跳ねた毛先へ、そっと指を伸ばす。
さらり。
柔らかい感触が、指先を滑った。
……触れた。
驚きながら、そのまま毛先を右へ流す。
願掛けみたいに。
――右になれ。
「あっ」
ひまりが肩を震わせた。
「へぁ?」
自分の頭を触る。
「また跳ねてた!?」
ぱっと顔を赤くした。
「もぅ……恥ずかしいなぁ……」
慌てて押さえる。
俺は固まった。
待て。
今。
触れた?
本物?
じゃあこの左は――
その隣で。
俺にしか見えない右向きのアホ毛が、ふわりと揺れていた。




