7.一年ののち
「一年の後」って、サガンの小説のタイトルですね。
そうして、それから一年が過ぎた。日々は、少なくとも2人(比那と春川)にとっては何気なく過ぎていった。変化も進化もなかった。
深化は……あったかもしれない。それぞれの年齢なりに。
比那は37歳になった。春川は36歳になった。
また、キョウチクトウの花が咲いた。梅雨の季節になった。
その前に、2人は忌野清志郎の追悼コンサートに行った。
「もう亡くなって15年以上経っているのに……」
「それだけ愛されてたんだよ、だから未だに追悼コンサートが開かれてる」
「追悼ライブ、でしょう?」
「コンサート」
「ライブ……どっちでもいいわ!」
「コンサートってさ、もともと『競争する』っていう意味なんだって。だから、アタシは『コンサート』」
「春川、地味に体育会系だもんね?」
「地味に、は余計だよ」
「それにしてもさ」
「ん?」
15秒ほどの間を置いてから、比那が言う、
「名古屋飛ばしじゃないけれどさ、Sってライブ開かれないよね?」
「だから、コンサートだって!」
「コンサートってさ、大きなイメージ。でもさ、清志郎さんにはライブっていう言葉が似合う気がする」
「分かってきた? だんだんに」
春川は、うんうんとうなずく。
「分かってきた」
だから、比那も。
「じゃあ、来年もだね?」
「来年は、凛として時雨」
「tk……じゃないの?」
「春川、間違うからさ」
「間違わないよ、失礼だな」
春川がまた、年甲斐もなく拗ねる、
「間違うよ……どっちに?」
「どっちも」
「そうだね」
そうして、2つの死が訪れた。
時間経過がメインの短い章でした。




