5.春川との友情
春川との友情の話です。
比那と春川の住んでいる界隈は(ちなみに、2人は小学校からの同級生である)とくに神社やお寺の多い地域で、同じ町内に1つの神社と2つの寺院がある。春川の実家の3軒となりはお寺である。
子供のころの比那と春川は、遊び疲れてお寺のお墓で眠るようなこともあったが、それでも幽霊を見るようなことはなかった。2人とも、霊感は強くなかった。
しかし、比那が病院で働くようになると、彼女は幽霊の噂話を聞くようになった。今勤めている病院は2か所目だったが、前の病院は霊体験が元で辞めた。
比那の務めている病棟で、幽霊が出るという噂が広まったのである。なんでも、ベッドで首を吊って死んだ女の子の幽霊だそうだ。それと前後して、比那は体調を悪くした。
影響は春川にまで及んだ。彼女の元には、昼でも夜でも無言電話がかかってくるようになった。そうして、ストレスに悩まされた春川は帯状疱疹にかかった。
春川は、キャバレーのホステスをしていたので、帯状疱疹は致命的だった。春川は、比那をなじる。
「この、霊カン女! アンタのせいでアタシ仕事できないよ? クビになるよ? どうしてくれるの?」
比那は戸惑った。
「どうしてって、私のせいじゃないじゃん?!」
「アンタのせいよ! アンタが病院なんかで働いてるから、アタシにも被害が及ぶのよ!」
「何その無理矢理??」
そんな言いがかりに屈したわけではなかったが、比那は自分も入院するほど体調を崩してしまったので、仕方なく転職することにした(当然、家族からは反対されたが)……。
霊のせいではなかったのかもしれないが、霊というものは恐ろしい。
* * *
そんなところに、根舞羅の「ツインレイ」である。
比那は、ネットで「ツインレイ」について調べ、困惑し、苦笑した。
比那は、春川に電話する。
「前に話した根舞羅クンっていう男の子がさあ……」
「ネビュラ? ああ、いたねえ、変わった子。アンタの病院の患者でしょう?」
「そうなんだけれどさ、今日また会った」
「なんで?」
「北山のケーキ屋で働いているの。私、チーズケーキ買いに行ってさ?」
「そこで会ったの? アンタ、ケーキ好きだもんね?」
「好きなのはパン。今日はたまたまチーズケーキ」
「ふうん。それで、何だって?」
春川は、いかにも気がなさそうに尋ねる。……彼女も出勤前で忙しい。大方、今は髪にアイロンを当てている。
「私のこと、ツインレイだって……」
「ツインレイ? 何それ?」
「なんだかさ、ソウルメイトの一種らしい。前世でたった一人の関係だった人間なんだって」
「何それ? 重……」
「重いでしょう? でも、春川のこともソウルメイトだって言ってた」
「おいおい、比那、ヘンな奴と知り合いにならないでよ。嫌だよ、アタシ」
「嫌だって言っても、病院の患者だった子だし……」
「アンタの病院さあ、おかしい患者多くね? おかしくね?」
「長期入院の患者さん中心だからねえ、変わった人は多いかもしれない」
「変われって! 転院!」
「また? てか、転院とは言わない」
「そっか」
「うん、そう」
* * *
結局のところ、比那と春川と根舞羅は3人でつるむ仲になった。なぜ、あんなに嫌がっていた春川が折れたのかと言えば、根舞羅の店に比那が行くたびに、春川の分もチーズケーキをサービスしてくれる、というのが効いたらしい。現金なものである。閉鎖的な性格の(と、比那は思っている)春川にしては珍しい。
(春か夏に雪が降るかもしれない)
と、比那は思った。
「ソウルメイトっていうのはねえ、この世に12人くらいいるらしいんです。だから、亜梨沙さんもその12人のなかの1人です。俺、あなたのことも大切にします!」
「12人? 多過ぎるよ。アタシ、嫌だよ。アンタとソウルメイトとかって……」
春川はずけずけと言った。
「気にしませんよ、俺、良い奴なんで」
「良い奴って、自分から言う? 普通?」
「言いますよ。良い人は気にしないんですよ、そういうこと」
「気にするよ、アタシは! とにかく、ソウルメイトは嫌だからね!」
「なんで嫌がるかなあ? 前世の神様が決めたんですよ?」
「いねーよ、神なんて! カボチャ大王にでも聞けって!」
「カボチャ大王?」
「そう。カボチャ大王。キング・オブ・パンプキン、パンプキン・キング」
「同じじゃないですか?」
根舞羅が首をかしげる。
「同じじゃねえ! どっちか忘れた……」
「ウッカリさんなんですね? 亜梨沙さんは?」
「言われたくねー! お前には絶対言われたくねー!」
「またまた!」
「いや、マジで」
比那の愛車はホンダのスーパーカブだったが、春川の愛車はフェアレディZのZ32だった。それに比那や根舞羅を乗せて、泉水山のゲレンデや荒砂海岸といった地元の観光地に連れていく。
そんな春川に、
「フェアレディZって、おっさんの車でしょう?」
と、根舞羅は失礼なことを言う。
「おっさんの車じゃないわよ! アタシ的にイケている車なの! 女子だって結構乗っているのよ? 視野が狹いな……」
「私、スーパーカブだから」
「俺、自転車。ロードマン」
「ママチャリかと思ったわ。アンタはママチャリに乗ってなさい、チーズケーキ屋で働いているくらいなんだから!」
「亜梨沙姉さん、やっぱりオヤジだ。オヤジ、恐え〜!」
「口の減らないガキね!」
「オヤジ、オヤジ、やっぱりオヤジ〜!」
「私もそう思う……」
「アンタには言われたくない! もうのせてやらないわよ!?」
春川は、思わずマジ切れしそうになっている。
「えーっ、いやだ! 乗せてよう」
「なら、アタシを敬え! 尊敬しろ! さっきの発言を取り消すこと」
「やっぱ、オヤジだ。恐えーっ! つうか、傲慢!」
「そうだ、そうだ!」
まあ、色んな意味でそうではあるのだったが、そんな関係は壊れずに今も続いている。
いろいろとドタバタです。




