確率論的モツ煮。……あるいは、観測される筋肉(バルク)
「……ふにゃぁ。……なぜ、……私が大鍋の前で、……『ナカ(焼酎)』を隠し味に注いでいるのですか……」
ベルシュタイン邸の広大な庭園。世界を爆破したはずの英雄(おっさん聖女)を祝うため、皇帝、元帥、王子、兄、そして一億人の期待を背負った私が、居酒屋の大将(幻影)から授かった秘伝の「薬膳モツ煮」を調理させられていた。
「ククク……。リリアーナ様、この調理工程にはシュレディンガーの方程式が組み込まれています。……蓋を開けて『観測』するまで、そのモツが『筋肉を肥大させる』か『肌をツヤツヤにする』か、……二つの状態が重なり合っている(コヒーレンス)のですよ」
【量子力学的調理:シュレディンガーの猫】
ψ = a|筋肉⟩ + b|美肌⟩
(ψ: つまみの波動関数。観測者が「マッチョ」か「熟女」かによって、波束の収縮先が決定される)
「……フェリクス様、……論理を料理に持ち込まないでくださいまし……。……私はただ、……味が染みていれば、……それでいいんですのよ……」
私が「不確定性原理」に基づき、適当に七味唐辛子をブチ込んだその時。
「さあ、リリアーナちゃん! その『量子つまみ』、私に一番に観測させてちょうだい!」
ヒルデガルド様が、おっさん幻影軍団を従えて突っ込んできた。
「いや、僕の『鋼の胃袋』で先に処理させてもらうよ!(王子)」
「妹よ! ベルシュタイン家の誇り(胃もたれ)にかけて、私が毒見を……!(兄様)」
全員が鍋にスプーンを突き立て、一口食べた瞬間。
**【量子崩壊:マッスル・オア・ビューティー】**が発動した。
「……っ!! お、おっさん幻影たちの腹筋が、……急激にエッジの効いた『シックスパック』に収束(収縮)していく……!!(ヒルデガルド様)」
「……ひゃぅっ!? バルバラ皇帝の肌が、……陶器を超えて『超伝導体』のように発光していますわ……っ!!(リリアーナ)」
食べた者の「煩悩(欲望)」を読み取って、モツが分子構造を最適化。
王子たちは「若手マッチョ・アイドル」から「光り輝くバルク神」へと進化し、熟女たちは「鉄の女帝」から「全盛期の美神」へと強制アップデートされた。
「……ふにゃぁ。……皆様、……勝手に収束しないでくださいまし……。……私は、……ただの……、……『つまみ』を作っただけなのに……」
「リリアーナ様! 大変です! 鍋に残った『汁』が、エントロピーの法則を無視して自律進化を始め、……『無限にお代わりが出る魔導サーバー』へと自己増殖を開始しました!!」
「……ひゃぁぁぁ!! ……定時退社した後に、……『無限の食欲』というバックログを残さないでくださいましぃぃ!!」
リリアーナの作った「おっさんの味」は、量子力学の壁を越え、全人類を「無限飲み会」という名の、終わりのないループ処理へと引きずり込んでいくのであった。




