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全自動ドアの動力源。……帝国の誇りは振動と共に消ゆ(隣国編・其の三)

「……ふん。リリアーナ嬢、君にそこまで(31話での査定)言われては、帝国皇太子としてのプライドが黙っていられん! 君が渡してくれた薬を飲む前に、まずは我がガルス帝国の魔導科学の結晶、この『帝立特製・筋肥大触媒ポーション』の効果を見せてやろう。君の数式が間違っていることを証明してみせる!」


マキシマム皇太子は、懐から重厚な金属ケースを取り出し、中にある禍々しい薬を飲み干した。刹那、彼の体は一回り大きくなり、血管が浮き出た。


「どうだ! この、帝国の魔術具が計算し尽くしたバルクは!!」


勝ち誇る皇太子。しかし、それを見たリリアーナは、欠伸を噛み殺しながら鼻で笑った。


「……ふにゃ。……何ですか、その**『盛り塩』**のような筋肉は。……帝国の魔術具とやらは、算数もできないのですか? ……細胞の密度も、神経の伝達速度も、以前のゴミを少し集めて『ゴミ袋』を大きくしただけ。……相変わらずの廃棄物スクラップですわ」


「な……ゴミ袋だとぉぉぉ!?」


「……本当の『神の領域バルク』を教えて差し上げますわ。……さあ、さっきお渡ししたそれを飲みなさい。……あなたの安い魂が、筋肉の衝撃で弾け飛んでも知りませんわよ?」


リリアーナが(31話の最後に)差し出していた、不気味な黒光りを放つ**『至高の超圧縮ハイパー・プレスゼリー』**。マキシマムは、彼女の圧倒的な美しさと、その瞳に宿る絶対的な自信に当てられ、吸い込まれるようにそれを飲み干した。


「……っ!! あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」


その瞬間、応接室に地響きのような唸りが轟いた。皇太子の筋肉が、細胞単位で「音」を立て始めたのだ。


シュゴォォォ! と噴き出す熱気。帝国の薬で膨らんだ安っぽい肉は一瞬で焼き切られ、その奥から、**「鋼鉄を編み込んだような高密度」**の筋繊維が誕生した。


「……こ、これは……何だ……!? 筋肉が……私の意思を超えて、世界と共鳴シンクロしている……!!」


超高速で振動するマキシマムの体からは、もはや重低音のエンジン音が鳴り響いている。帝国の魔導科学が束になっても届かない、リリアーナたった一人の「計算(愛)」が、人類の限界を軽く突破したのだ。


マキシマムは、自分の体に起きた「格の違い」に震えた。


「(……ああ……!! 私は今まで、何を見ていたんだ……。帝国の技術など、彼女の足元にも及ばない。……リリアーナ……君こそが、この世の真理、筋肉の女神だ……!!)」


完全に「新しい扉」を開き、恍惚の表情で震える皇太子。そんな彼を見下ろしながら、リリアーナは銀髪をかき上げ、最高に美しく、そして**「物凄くきつい最後の一言」**を言い放った。


「……ふにゃぁ。……良かったですね、皇太子様。……ようやく、**『粗大ゴミ』から、私のラボの『高性能な自動ドアの動力源エンジン』**くらいの価値には上がりましたわよ」


「エンジン……!! 私は君の、自動ドアの……動力!!」


「……ええ。……その振動する体で、明日から両国の国境にある門を、人力で24時間開閉し続けてくださいな。……それが、私への愛の証明……いいえ、無能なあなたが世界に貢献できる、唯一の『筋肉の再利用方法』ですわ」


その瞬間、マキシマムは「愛」と「屈辱」と「悦び」が混ざり合った、この世で最も幸せそうな絶叫を上げた。


「喜んでぇぇぇ! 私は君の、君専用のエンジンになるぞぉぉぉ!!(ブルブルブル!!)」


隣国のゼノス外交官は、その光景を前に静かに膝を突いた。


「(……終わった……。帝国の誇りは、今、全自動ドアの部品として売却されたのだ……。……これからは、筋肉で彼女に従うしかない……)」


こうして、隣国の侵略(?)の危機は、リリアーナの無慈悲な一撃と、震え続ける皇太子の誕生によって、平和的に(?)幕を閉じたのである。

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