学園祭は「筋肉の祭典(マッスル・フェス)」へ。数式が導く偽りのバルク
聖ローゼス学園祭。例年なら優雅な茶会が催される中庭は今、リリアーナの手によって「筋肉の暴力」に支配されていた。
「……ふにゃぁ。……皆様、見てください。この『SASUKE(障害物魔導競走)』のセットを。……そしてあちらは『プロレスリング』。……仕上げは、究極の美を競う『学園ビルダー大会』ですわ」
興奮のあまり、私の脳内ではアドレナリンと数式が混濁し、口から怪しい呪文(化学式)が溢れ出していた。
「……ふにゃにゃ。……ただのプロテインでは足りません。……もっと、こう、細胞壁を限界まで拡張させ、ミトコンドリアに魔力を直噴する薬が必要ですわ」
私はラボの釜をかき混ぜながら、空中に次々と化学式を展開した。
【狂気の数式 1:急速バルクアップ薬『エクスプロージョン・ホエイ』】
C_{muscle} = \int_{0}^{t} (N_{protein} \cdot \Delta Magic) \, dt + \lim_{x \to \infty} (Symmetry)
NH_{2}-CH(R)-COOH + Energy \implies Muscle\_Mass \times 100
「……ふにゃあ! できた! ……でもこれは、飲んだ瞬間に筋肉が痙攣して『ふにゃにゃにゃにゃ』な踊りを踊り続けるだけの失敗作でしたわ」
【狂気の数式 2:強制血管浮き彫り薬『リバウンド・ベイン』】
P_{blood} = \frac{nRT}{V - b} - \frac{a}{V^2} (ファン・デル・ワールス筋肉定数)
\Delta Heart\_Rate \propto \sqrt{Arterial\_Exhibition}
「……ふにゃぁ。……これもダメ。血管が浮き彫りになりすぎて、全身が『人体の不思議展』みたいになって、周囲がふにゃにゃにゃにゃ(ドン引き)になってしまいましたわ」
失敗作の山が築かれる中、私はついに、一つの「特異点」に到達した。
【究極の数式:人工筋肉定着薬『テウス・デウス・マッスル』】
\Psi(r, t) = \hat{H} \Psi(r, t) (シュレディンガーの猫ならぬ『シュレディンガーの筋肉』)
Protein\_Folding = \exp(\frac{-E_a}{RT}) \times Beauty\_Factor
「……これですわ。……これこそが、私の脳内にのみ存在する『神のバルク』を現世に投影する薬!」
学園祭のステージ。優勝候補の平凡な同級生、モブ太がその薬を煽った。
刹那、会場に雷鳴が轟く!
「オォォォ! 筋肉が……筋肉が、黄金色に輝いているぅぅ!」
そこに現れたのは、アレン王子の神速も、お父様の美魔男ぶりも凌駕する、**「理想的なカット」「完璧なセパレーション」「爆発的な質量」**を兼ね備えた、神の彫刻のごとき筋肉戦士。
王子のライバルになり得る、圧倒的な威圧感!
会場中が「リリアーナ様の理想が現れた!」と熱狂に包まれる中、私はその黄金の筋肉に歩み寄り……そして、真顔で鼻を鳴らした。
「……ふにゃにゃ。……ボツですわ」
「えぇぇぇ!?」
モブ太(理想のマッスル姿)が絶叫する。
「……見てください、その大胸筋の質感。……確かに形は理想的ですが、そこに『日々の苦悩』と『ささみへの執着』が感じられません。……人工的に整えられたバルクは、私にとってはただの『高価な置物』。……ふにゃ。……やっぱり、偽物の筋肉には、私の心はパンプアップしませんわ」
結局、薬の効果が切れると共にモブ太は元の平凡な姿に戻り、会場には「ふにゃにゃにゃにゃ」とした脱力感だけが残った。
アレン王子は「(……助かった。薬で勝てないなら、やはり僕は『本物』を追求するしかないんだな!)」と、一人だけ妙な方向に納得して目を輝かせていた。
「(……次は……細胞レベルから『意思を持つ腹筋』を培養しようかしら……)」
リリアーナの化学式は、また一つ、倫理の壁を飛び越えようとしていた。




