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自給自足のバルクを求めたら、神話級の美少女(虚弱)になりました

「……もう、誰も信じない。筋肉は、自分の細胞なかまだけで作るものよ……」


偽筋肉バルガスの事件以来、私はラボに閉じこもっていた。


前世の俺……じゃなくて私の、唯一の拠り所だった「バルク」が、魔法の詰め物で汚されていたなんて。


もはや、他人の筋肉を眺めるだけでは癒やされない。私は、私自身の中に「理想の冷蔵庫」を建てるしかないのだ。


「……見ていろ。魔法と化学の粋を集め、この豆腐のような私の体に、直接『筋繊維の超圧縮ハイパー・プレス』をかける……!」


私は虚弱な指で、血を吐くような思いで最終数式を書き殴った。


【聖域ノート:自己改造用・究極進化ポーション『マッスル・ジェネシス』】

細胞の全リソースを骨格筋の肥大に転換し、同時に成長ホルモンを暴走ブーストさせる。


Muscle_Volume = Total_Energy / (Beauty_Factor * 0)


そう、「美」などという不純物はゼロにする! 筋肉の、筋肉による、私のための肉体改造だ!!


「……ふにゃにゃにゃにゃ! できた! これを飲めば、私は一瞬でゴリマッチョの『剛腕リリアーナ』に生まれ変わる!!」


私は完成した、漆黒に輝く(不気味な)ポーションを一気に飲み干した。


刹那、全身の細胞が沸騰し、体が激しい光に包まれる!


「……来る! 来るぞ、俺の広背筋! 俺の大腿四頭筋ィィィ!!」


ドォォォォォン!!


ラボを突き破るほどの魔力の奔流が収まり、そこには……。


「……えっ?」


鏡の中にいたのは、私が求めた「山のような大男」ではなかった。


そこにいたのは、銀色の髪が神々しいまでの輝きを放ち、瞳には星々を宿したかのような、**この世の言語では形容できないほどの「究極の美少女」**だった。


肌は透き通り、ただそこに立っているだけで周囲の空間が浄化されるような、神話的な美。


……だが、体つきは。


「……ほ、細ぉぉぉい!? 以前よりさらに、枝みたいに細くなってるぅぅぅ!?」


そう、私は計算を間違えたのだ。


筋肉を増やそうとしたエネルギーは、魔法の暴走によってすべて「美しさ」という不純なステータスに変換されてしまい、筋肉どころか、脂肪や維持に必要な最低限の体力まで「美」のために生贄に捧げられてしまったのだ。


「お、お嬢様……!? な、何ですかそのお姿……! ま、眩しすぎて直視できません! 世界の、世界の神様が降臨されたのですか!?」


駆けつけたサーシャが、あまりの美しさに失明せんばかりに目を押さえてひれ伏した。


「違う……。私は、私はマッチョになりたかっただけなの……。なのに、なんでこんな……ふにゃにゃにゃにゃ……っ」


あまりのショック、そして「美」に全エネルギーを奪われた私の体は、以前にも増して絶望的なまでの「虚弱」に陥っていた。


「……だめだ、瞬きをするだけで、まぶたの筋肉が悲鳴を上げている……。指一本動かすのに、一日分のプロテインが必要だ……」


私は、この世で最も美しい「神の美少女」として完成したが、同時に、**「呼吸するだけで筋肉痛になる」**という史上最弱の存在になってしまった。



数日後。


リリアーナが「更なる進化」を遂げたという噂は、国境を越え、全世界へと広まった。


「……リリアーナ、君は……君はもう、人間ではないのか?」


アレン王子は、あまりの神々しさに触れることすらできず、十メートル離れた場所で跪いていた。


王宮の重鎮も、マダムたちも、騎士団も、もはや彼女を「美の聖女」とは呼ばない。「至高の神」として拝み始めた。


しかし、その「神」の本音は……。


「……あぁ、プロテイン。ささみ……。私は……私は、ただ、デカくなりたかっただけなのに……ふにゃ……」


この世で最高の美貌を手に入れた代償に、リリアーナはついに「風が吹くだけで脱臼する」レベルの虚弱体質へと至ったのであった。


「(……クソ。次は……次こそは、重力に勝てる『美しくない筋肉』を、化学で作ってやる……!)」


彼女の、間違った方向への執念は、まだ潰えてはいなかった。

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