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偽りのバルクは、真実の薬(ケミカル)で剥がれ落ちる

「……ハァ、ハァ……。バルガス様、その……上腕二頭筋の『ピーク』、もう一度見せていただけますか?」


私は鼻に綿を詰めたまま(鼻血対策)、震える手でバルガスの腕に触れようとした。


これだ。この圧倒的な質量。これこそが私の、いや「俺」の生きてきた証……!


だが、指先が彼の肌に触れる寸前。

私の脳内にある『超高精度・筋肉スキャナー(前世の経験値)』が、異常なアラートを鳴らした。


「(……ん? 弾力が……不自然だ。大胸筋の起始部と停止部の接続が甘い。それにこの魔力反応……これはタンパク質の肥大じゃない。**『高分子魔法シリコン』**による、ただの肉盛りだ!)」


一瞬で、私の恋心(筋肉愛)は、氷点下まで冷え切った。


この男……あろうことか、この聖なる筋肉の聖域ラボで、**「偽筋フェイク・マッスル」**を晒したな!?


「リリアーナ嬢、どうしたのかね? 私の肉体に、見惚れて声も出ないのかな?」


バルガスが、偽りの大胸筋をピクピク(魔法制御)させながら、勝ち誇ったように笑う。


兄カシアンも「はっはっは! バルガス君のバルクは世界一だろう!」と自慢げだ。


……許せん。

他の嘘なら許そう。だが、筋肉を、努力の結晶であるバルクを偽造することだけは、万死に値する!!


「……ふにゃにゃ。……サーシャ。奥の棚から、試薬010番……『真実の剥離ストリッピング・エッセンス』を持ってきなさい」


「お、お嬢様? 目が、目がマジですわ! いつものふにゃふにゃ感がゼロですわ!」


私はノートに、怒りの化学式を叩きつけた。

【聖域ノート:偽造筋肉・溶解プロセス】

魔法シリコンの分子結合を、強酸性魔力によって瞬時に加水分解する。


Dissolution = (Polymer_Linkage / Magic_Catalyst) * My_Anger^2


偽りの肉壁よ、真実の前に霧散せよ!


「バルガス様。……最後のご奉仕メンテナンスですわ。これを塗れば、あなたの筋肉は……『真実の姿』になります」


「お、おい、なんだその毒々しい色の液体は……」


私が(執念の力で)ポーションをバルガスの肩に振りかけた瞬間。


シュゥゥゥ……ッ! という、空気が抜けるような情けない音と共に、彼の体が「萎んで」いった。


「なっ……!? わた、私の体が! 私の自慢の筋肉がぁぁぁ!!」


光が収まった後に立っていたのは、丸太のような腕を持つ男ではない。


……そこには、**「カマキリのように細く、頼りない枝のような腕」**を持つ、もやしっ子のようなバルガスが呆然と立っていた。


「……な、なんだってー!? バルガス、君のその筋肉は……詰め物だったのか!?」


兄カシアンが絶叫する。

そう、彼は魔法でシリコンを膨らませ、女子人気の高い「ゴリマッチョ」を偽装して、リリアーナに取り入ろうとした詐欺師だったのだ。


「……ふにゃぁ。……汚らわしい。プロテインの風上にも置けない。筋肉とは、日々のスクワットと鶏ささみが生み出す聖域……それを魔法で誤魔化すなんて、筋肉に対する冒涜ボウトクです!」


私は冷たい瞳で、床に転がったシリコンの塊を見下ろした。


「……連れて行ってください、兄様。今の私には、彼の細すぎる前腕筋を見るだけで、網膜が拒絶反応アレルギーを起こします」


「ま、待ってくれリリアーナ嬢! これには深い事情が……!」


「黙れ、このバルク詐欺師が!」


兄カシアン(ガチ騎士)の拳が、偽筋肉野郎を場外へと叩き出した。


一件落着……だが、私の心はボロボロだった。

ようやく見つけた理想の巨塊が、ただのプラスチックだったなんて。


「……ふにゃにゃにゃにゃ。……お姉様。……王妃様……。私を……私をヨシヨシしてください……。筋肉なんて、筋肉なんて信じられない……(※三日後には忘れる)」


私はそのまま、駆けつけてきた美魔女公爵夫人の胸に飛び込み、深い絶望(と至福の香り)の中で意識を失った。


リリアーナの「本物の筋肉」への探求は、この事件を経て、より過激でマニアックな方向へと加速していくのであった……。

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