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魔王が死んでも、世界は思ったより平和じゃない  作者: Soh.Su-K
第1章 4節 盗賊団討伐依頼編

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第44話 早々にフラグ回収するのはやめてくれ

「隠れ家にしやすいのはどういう場所か分かるか?エルウィン」


 俺達は南の街道を南下していた。

 被害が出ているのは街から歩いて1日程の距離だが、如何せん南の街道は人通りが比較的少ない。

 王国の南方は荒野で、更に南は砂漠化している。

 人口も少ないので、必然的に往来も少ない。


「洞窟や洞穴みたいな場所」


「だが、南は平坦な土地だ。洞窟などはないし、そんなもんがあればすぐに隠れ家を特定出来るわい」


「グローの言う通りだ。この辺りの天然の拠点はない。つまり?」


「家を建ててる?」


「もしくは、近くの集落の住民がその場所で野盗行為をやってるかだ」


「なるほどね」


 俺達は特に襲われる事もなく、現場近くのフィロー商会が設営した休憩所に着いた。

 この場所を拠点として調査をする予定だ。


「見ろ、行(・)方(・)不(・)明(・)の(・)奴(・)ら(・)もここを拠点にしてたようだ」


 休憩所には真新しいテントと焚火跡もある。

 寝袋の数からして、例の5人組のものだろう。

 まるでさっきまでいた様な状態だ。

 半時も待っていれば、帰って来そうな雰囲気である。


「何だか、気味が悪いのぉ……」


 そう言いながら、グローは背負っていた荷物を降ろす。


「引継ぎ依頼なんて、得てしてそんなもんだ。前の奴らが死んだから引き継がれる訳だしな」


 俺は荷物を降ろして、休憩所内を軽く調査した。

 争った形跡は勿論、血痕もない。

 恐らくここから出発した後に襲われたのだろう。


「行方不明になった5人組はどういう編制だったの?」


「剣《ソード》使いの人間《ヒューム》が2人、斥候《スカウト》の圃矮人《ハーフリング》が1人、魔法使い(ウィザード)の耳長人《エルフ》が1人、僧侶《プリースト》の人間が1人だ」


「悪くないバランスだと思うが、それでダメだったとはの」


「何が待ってるか分からん以上、警戒する以外にないな」


「とりあえず、今日は野営の準備だの。調査は明日からにするか」


「そうだな、もうすぐ日が落ちる」


 俺達は、先(・)客(・)のテントを借りる事にした。

 自分達のテントも持ってきているが、既に建てられたものがあるのなら、わざわざ荷を解く必要もない。

 流石に寝袋は取り換えたが、他はそのまま使わせてもらう。


「ガル、ちょっといい?」


 飯の準備を始めようとしていた俺をエルウィンが呼び止めた。


「何だ?」


 エルウィンは、休憩所の端の方に立っていた。

 足元を見つめている。


「コ(・)レ(・)、見える?」


 足元を指差すエルウィン。

 そこには足跡がある。

 比較的新しいものだ、先客の誰かのものかもしれない。


「足跡?」


「そうじゃないわ。もっと集(・)中(・)し(・)て(・)目(・)を(・)凝(・)ら(・)し(・)て(・)」


 よく分からないが、言われた通りにその足跡を凝視する。


「ん?」


 その足跡から微かに、何やら黒い煙の様なものが見える、気がする。


「黒い……靄《もや》?」


「ガルにもちゃんと見えてるのね」


「いや、ハッキリとは……。そんな気がするだけだ」


「それで充分。これは残滓《ざんし》よ、しかも魔(・)術(・)の(・)残(・)滓(・)」


「魔術の残滓?魔法じゃなく?」


 魔法を駆使した場合、そこに魔力残滓が残るのは聞いた事がある。

 どんなに効率よく魔力《マナ》を変換して魔法を使ったとしても、必ず数パーセントは変換されずに残るらしい。

 それを残滓と呼ぶ。

 残滓は時間経過と共に空気中や地中に霧散してなくなる。

 雨が降れば消え去るのはもっと早くなる筈だ。

 その残滓が微かに残っている。

 しかも、魔術の残滓となると、ここで魔術が使われたって事か?

 まさか、現代に魔術を使える奴などいない筈だ。

 いるとしても、エルウィンくらいではないか?


「魔術残滓が見えるのは、魔術の素質を持ってる者のみよ。グローには全く見えないわ」


「そう言えば、魔術のどうのこうのって前にお前が言ってたな」


「単刀直入に聞くけど、犯人は貴方じゃないのよね?」


 エルウィンの言葉にハッとさせられた。

 俺には魔術の素質があるどころか、ウラグから紋章の様なものを貰ったのだった。

 ウラグが言うには、俺には闇魔術の素質があるとか。

 いやいや、だからって俺は何もしていないぞ。


「まさか!俺がなんでこんな事を!」


「ううん、本気で疑ってる訳じゃないわ。ただ、これは闇の魔術の残滓。今のところ、私が知っている闇魔術を使えそうな人物はガルだけだったから。そうじゃないとなると……」


「暗黒種族……」


「しかも、上級の魔術師《ストライゴン》って事になるわね……」


 案の定と言うか、何というか……。

 やはり、グローの『どうにかなる』は、ある意味フラグなのだと痛感した。


「さっきから何を2人で話しておるんだ?」


 休憩所の隅で話し込んでいる俺達を怪しんで、グローがやって来た。


「あぁ、エルウィンが足跡を見付けた。恐らく、行方不明になった5人の内の誰かの足跡だ」


「ふむ……」


 グローがマジマジとその足跡を眺める。


「種族は人間、女だな。身長は160センチ程、華奢な体型だろうの」


「恐らく、僧侶だ。特徴が一致してる」


「こちらに向かって歩いて行った様だの。歩幅が不規則なところから見ると、フラフラだったようだ」


「でも、血痕はないわね。肉体的疲労か」


「精神疲労の可能性もあるか」


「とりあえず飯にせんか?日が暮れた中、森に入るのは危険だ」


「そうだな、グローの言う通りだ」


 明日の調査は足跡を追う事から始めよう。

 とにかく今日は飯を食ってしっかりと寝る事にした。

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