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ヴェスタとフリーダのパーフェクトワールド  作者: 夜半野椿
第二章 ルミナス開拓団
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第十六話 天使の影

 レイヴン自治区から首都イーグルシティへ無事に帰還したルミナス開拓団は、その日の内に報酬の受け取りとソラの治療を終えた。

 その次の日の朝。


「ふぁぁぁ……」

「おう。おはよう、フリーダ」

「ん……」


 フリーダが目を覚まし、ギルドハウスのリビングへ出ると、すでにソラがソファに座って新聞を読んでいた。


「ハノソンがセントエスノリアからの開発援助ねぇ……うーん、胡散臭(うさんくさ)い」

「ん?新聞かそれ?」

「おう」

(『ローズバッド新聞』……党報以外は初めて見たわ。『週刊』ってこたァ週1ペースで出してるのか……)


 この世界は転生者達が元いた世界と比べて、魔力の普及などの分、科学技術の面で後れを取っている部分が多いが、印刷技術に関しては、基本的に言語が世界で単一であることなどの好条件が重なり、かなり進んでいる。そしてこれがステイシアを始め多くの国が民主主義国家へシフトした最大の要因とされている。


「ソラ。アタシも半額出すから、後で読ませてくれ」

「オッケー。今度からおれとフリーダで新聞代出し合うか」

「それで頼む」


 フリーダはコップに水を注いで、ソラと同じくリビングのソファに腰掛ける。


「で、今後の予定は?」

「今のところ仕事は入ってねぇな」

「まァドラゴン討伐したおかげで特別報奨も出たし、しばらくは喰うに困らねェか……」

「とりあえず今日は訓練場に行くか」

「訓練場?」

「おれ達開拓団とか向けの施設だよ。その名の通り、訓練するためのとこ」

「豊かなもんだねェ……」


 ・

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 ・

 ・

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 ・


 昼頃、予定通りルミナス開拓団の面々は、首都内の訓練場へ向かった。

 広いスペースに加え、トレーニング用の器具や模擬戦用の木刀なども揃っており、ルミナス開拓団だけでなく、他の開拓団の者と思われる若者達もそこで将来の成功のために汗を流していた。


「ふぅぅぅっ……!!!」

「おおっ、やるじゃん!」

「魔力なしで200kg……」

「へっ、へへっ……パワーだけなら俺様がステイシア最強だぜ……!」


 そんな中、この若者達はベンチプレスで競い合っていたが、その少し離れたところでは……


「「ふぬぬぬぬぬ……!!!」」

「よーし。そんじゃそっから5回持ち上げてみようか。ほら、頑張れー」

「あ、アタシはティーカップより重いもんは持たねェっつってんだろ……!!!」

「ぼ、ボク……得物は銃なんですけど……!?」

「シドのデバイスの機能って意外と腕力要るじゃん。そのくらいは持ち上げないと」

「にゃはは!このくらい余裕だぞ!!」


「「「「「…………」」」」」


 フリーダとシドは魔力なしで300kgのバーベルを苦しみながらも持ち上げ、それをさも当然のように見守るソラとヴェスタ。そしてそれを証明するように、同じ条件でひょいひょいと上げ下げするレミファ。


「何だアイツら……?」

「アレだよ、ルミナス開拓団だよ……」

「!?あ……アイツらがこの前、レイヴン自治区で真竜1匹と亜竜3匹を狩った、あの……」

「『勇者』のソラ以外もバケモン揃い、最近入ったルーキー2人もヨハン達をあっさりシメたっていう……」


 この若者達も開拓団として十分生計を立てられるだけの実力を持ち、それなりの実績を挙げているのだが……


「か、帰るか……」

「ああ……」


 すっかり自信をなくした若者達はそそくさとその場を去っていった。


「あれ?いつの間にか他の人達いなくなってるぞ?」

「ちょうど良いや。せっかくだから模擬戦もやってくか」

「この木刀とかって勝手に使って良いの?」

「大丈夫だ。武器はそれで、デバイスはナシ。魔力の強化はアリだ。でも基本寸止めで、勝負してない3人が審判やる方式な。当てるにしてもちゃんと加減とかはしろよ?特に銃士のシドくん?」

「それはこっちの台詞ですよソラさん……ちょっとは手加減してくださいね?」

「今日はオフだし、思い切って総当たり3巡やってみっか」


 ・

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「はーい。そんじゃ、戦績発表していくぞー」


 各自3回ずつ、他のメンバーと対戦。模擬戦であっても計12戦も行なって、流石にヴェスタ達も疲労している中、ソラだけはまだまだ余裕の様子で司会進行を務める。


「まずは最下位(ビリ)からな。5位、フリーダ。1勝11敗」

「クッソ、バケモンどもめ……!」

「1回は勝てたじゃん」

「たまたまシド相手に間合い詰められたからな……」

「4位、シド。3勝9敗」

「ボクこういう正面切ってのタイマンは専門じゃないんですけど……」

「それでもレミファ相手に1回勝てりゃ大金星だよ。3位と2位は一気に発表すんぞ。3位、ヴェスタ。7勝5敗。2位、レミファ。同じく7勝5敗」

「やったー!!!」

「ええ~……勝率同じだからオレも2位で良いじゃん……」

「直接対決でレミファが勝ち越したからな。そして栄えある1位は~……じゃじゃーん!おれ!!全戦全勝ッ!!!」

「「「「知ってた」」」」

「そんじゃ各自、シーズンに向けてしっかり調整しておくように!目指せリーグ優勝!!」

「シーズンって何ですか……?」

(でも……良い訓練にはなった。正直オレ、前の反抗作戦までオレと同じかそれ以上の相手とほとんど勝負したことなかったし、訓練するにしても基本的に軍勢相手を想定してたから、実戦で必殺技使う機会もなかったんだよね。でも今はソラとレミファがいる。この調子でもっと強くなって、今度こそオブライエン総書記を……!)


 ウォーリアの王制復古とは直結しないこういう時間の中でも、ヴェスタは意味を見出していた。


(……まーた無茶するんじゃねェだろうな……?)


 しかしフリーダは、そんなヴェスタを見て、(にわ)かに嫌な予感を(つの)らせていた。


 ・

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 訓練を終えたルミナス開拓団がギルドハウスに帰るまでの道中。


「あれ?広場の方が賑やかだね」

「休日は色んな催しもんやってるからな。ちょっと寄っていくか」


 街の広場に寄り道してみると……


「みんなー!今日は集まってくれてありがとー!今日もラヴの愛の歌で~、み~んなハッピー!ステイシアを微笑みの国にしちゃうゾ♪」

「「「「「ラーヴちゅわあああああん!!!」」」」」

「ラヴちゃんマジラヴリィ!」

「やーん!ありがとぉ~♪キミの笑顔もとっても素敵だよぉ~♪」


 ステージの上に1人の小柄な美少女。癖のある紫色の髪を(ゆわ)えて、華やかな衣装に身を包んで笑顔を振る舞っている。ステージの前には多くの観客が集まり、そんな彼女に熱狂する。


「ら、ラヴちゃん……ほんと天使ですなぁ……フヒヒ……」

「フフフ……同志よ、ラヴちゃんの身長はご存知ですかな?」

「『りんご18個分くらい』。そんなの常識ですな。ラヴちゃん公式マニュアルの14ページに書かれてますぞ」

「やはり1曲目は定番の『デット・レーエンデ・ステイシア』ですかな?」

「いや、新曲の『異邦のイングリッド』の可能性も……」


「うわキツ。何だアレ……?」


 フリーダはそんな様子に引き気味。


「『今イーグルシティで話題沸騰!大型新人歌姫ラヴリィ・ハンソン、微笑みの野外ライブ』……」

「ふーん、アイドルか」


 近くの掲示板に貼られたポスターを見るシドとソラ。


「……うーん……」

「おいヴェスタ、まさかあんなのが好みじゃねェだろうな……?」

「え!?い、いや、そういうのじゃなくて……」

(実はちょっと……だって……)

「あの人、何かフリーダに似てるなぁって」

「……あんなキャピキャピして男に媚びまくってる女なんかに死んでも似たくねェ……」


「…………」


 ラヴちゃんことラブリィ・ハンソンは観客席よりも遠くからこちらを見るルミナス開拓団の視線に気付いたが……


(アイツが……)

「それじゃ1曲目いっくよー!最初はいつものこの曲、世界で一番豊かで笑顔溢れるステイシアを讃えるご機嫌なアッパー・チューン!『デット・レーエンデ・ステイシア』!」

「「「「「うおおおおお!!!」」」」」


 気にする様子を見せず、そのまま歌を歌い始めた。

挿絵(By みてみん)

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