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18話 ボズウェルの最期④

「大盾、構えーーーいっ!!」


 ダレルの掛け声により、鉄人と獣人の歩兵達が臨戦態勢を取る。

 無数の大盾が、がしゃがしゃと音を立てた。


「我たち弓騎兵は左右に展開!! 生き残った弓兵を攻撃しましょう!!」


 クロエの号令により、森人達は隊を二つに分けた。

 数は五百と少数ではあるが、この状況で左右からの援護は大きい。


「来るぞ!! アドラーの人間共など、弾き飛ばしてしまえ!!」


 オズワルドに発破をかけられた味方の兵達は、姿勢を低くして身構えた。

 そして──


 衝突。

 盾と鎧がぶつかる、無数の音。

 俺は思わず目を背けそうになるが、辛うじてそれは耐えた。

 ただ黙って、その惨状を見つめる。


(……これが亜人の力か。思っていた以上に、一方的だな)


 最初に敵の弓兵を黙らせたのが、決定打となった。

 こちらにぶつかってくるボズウェル兵は、ことごとね飛ばされ、そのまま剣で斬られ、槍で突き上げられた。


 少し後ろの生き残りの弓兵も、クロエ達によって容赦なく刈り取られている。

 ──それでも、ボズウェルは一歩も動かなかった。


「……ソウマ、決まりだ。奴は動かん。我々も行くぞ」


「ああ」


 側にいたマモルと、互いに肩を叩き合った。

 剣を抜き、盾の状態を軽く確認する。問題は無い。

 俺は兵に大声で呼び掛け、後詰めを開始した。


「攻撃!! 敵を残らず殲滅しろ!!」


 兵達と共に、最前線を目指し駆ける。

 敵との体格差で乱れ始めた鉄人の列に合流しながら、俺は盾で敵兵にぶつかり、そのまま横薙ぎに斬り伏せた。


「よお、お前ら! 加勢に来たぞ!」


「なんだなんだ、スタリオンの大将かよ!」


「おおっ、ありがてえ!! でも、うっかり死ぬんじゃねえぞ!?」


「ははっ、俺が死んだら、あとは任せた!」


「ばっかやろう、あんたが死んだらターニャちゃんが泣くだろ!? しょうがねえ、俺らで守ってやるよ!!」


 肩を並べて戦う鉄人と軽口を叩きながら、目の前の敵を屠っていく。

 少し遅れてマモルも合流し、俺の横に並んだ。


「ソウマ、気を付けてね!!」


「ああ!!」


 友人と共に戦う。

 今のマモルに迷いは無い。

 

「そらそら、どうした!? ワタシのような、か弱い女一人殺せんのか!? かかってこい、アドラーの兵よ!!」


 少し離れた場所で、ロスヴィータの槍により血の雨が降っていた。

 縦横無尽に動き回り、突いて、薙いで、叩きつける。

 恐ろしい速度で死体が出来上がっていく。


 自分の周りの敵は、粗方片づいた。

 倒れた敵に注意を払い、止めを刺していく。


(……良かった。ターニャも、ちゃんと戦えているな)


 ふと、視線をやった先。

 味方を援護しながら、槍で敵の胸に見事な突きを決める彼女がいた。


 グラーネと、タリアやアルゴルも、まだ息がある敵の止めを差し始めたようだ。

 これで、戦の方はまず一段落。


 掃除が終わると、敵側に動きがあった。

 配下の兵を伴う事もせず、ボズウェルが一人、こちらへ歩いてくる。

 戦が始まる前と同様、泰然とした態度。


「……皆、すまない!! 死体を少しどかして、空きを作って欲しい!! 俺とあいつ、二人きりで戦える程度の広さでいい!!」


 俺の掛け声により、味方が戦場の死体をどかし始めた。

 ボズウェルは少し離れた場所で、それを見守っていた。

 ──すると、奴は上半身の鎧を脱ぎ始めた。


(……なるほど。俺が鎧同士の戦いに慣れていないのではと、気を遣った訳か。だがそれはつまり、俺も鎧を脱がなければ不平等になるという事なんだがな)


 溜め息をついてから、マモルに鎧を脱ぐのを手伝ってもらった。

 俺に近づいてきたグラーネは、何も言わずにそれを見ていた。

 腕を組みながら、複雑そうな表情を浮かべている。 

 ここまで読んでいただき、有り難うございます。


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