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【手直し中】グローリー・スタリオン~俺が種馬でハーレム生活!?いや、そんな事より平穏無事に暮らしたいんだが~  作者: 桐沢清玄
第2章 アドラー帝国の級友

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14話 竜の本質①

 翌日。グウィネス陛下と、竜人りゅうびとの族長であるフィオナ様との会談が行われる事となった。場所は、そのままグラーネさんの屋敷で。


 ただ、武田君曰く、彼女は精神的には少し不安定らしい。

 なので私たちは万が一の事態に備え、馬車の中に荷物を積み込み、いつでも出国出来るよう準備を整えていた。


 マール大要塞のそばで待機していた騎士たちも既にテントを畳み、彼らと共にいた御者はこちらに呼び寄せ、外の馬車で待機している。


 私たちがグラーネさんと応接室で待っていると、武田君がフィオナ様と共に現れた。

 彼女の護衛らしき、三人の竜人も一緒だ。男性が一人、女性が二人。


(凄い……! 確かに、あの人たちの見た目は竜をイメージさせる。護衛の三人は勿論だけど、フィオナ様の見た目は特に──)


 角と、体の外側を覆う鱗。それらは四人とも共通しているけど、フィオナ様だけが明確に違う特徴を持っていた。

 金色で、宝石のように輝く切れ長の目。小心者の私なんかは、とてもじゃないけど、まともに目を合わせるのも難しい。


 テーブルの向こう側にはフィオナ様と武田君、グラーネさんが座った。後ろには護衛の三人が控えている。こちら側には私と陛下と、ジェローム様。


 そこへ、ドアがノックされ、竹内さんが紅茶とお茶菓子を用意してくれた。

 ただ、カップの数は五つ。フィオナ様の前にだけ、紅茶は置かれなかった。


 私が不思議に思っていると、その疑問はすぐに解消された。

 この屋敷で竹内さんと共に料理を担当している、獣人けものびとのピーターさんとカミラさん。


 その二人が大皿に盛られた血の滴る生肉と、生き血が注がれた大きな杯を持って現れたからだ。


「さて、挨拶をしましょうか。初めまして、私はフィオナ。竜人の族長をしているの。普段はずっと里に籠もっているので、お呼びいただき誠に感謝しています」


「はじめまして、フィオナ族長。私はアドラー帝国女王、グウィネス・カシエル・レオノーラ・アドラーよ。こちらの我が儘に付き合って頂き、感謝するわ」


 その後、ジェローム様と私も簡単に挨拶を済ませた。

 そして少しの間、とりとめのない雑談が行われた。


「フィオナ族長にここまで来てもらって、世間話だけというのも良くないわね。我々二国間で起きている諍いが終わった後──その事について話しましょうか」


「ええ、そうね。……でもその前に少しだけ、腹ごしらえさせてもらうわね?」


 彼女はそう言うと、大皿に乗った生肉の塊を掴み、かぶり付いた。

 ぶち、ずちゅり、みちっ。


 両手と口の周りを真っ赤にしながら、どんどん胃の中に収めていく。

 歯も鋭く、顎の力も強いのか、まるでスイカでも食べているようだった。


 私も、陛下も、ジェローム様も、その異様な光景をただ黙って見つめていた。

 文化──いや。価値観もそうだけど、そもそも種族そのものが違う。

 これは果たして、会談になっているのだろうか。


 あっという間に生肉を平らげ、食後に生き血の入った杯で喉を潤した彼女は、人心地ついたようにお腹を撫でた。

 彼女のまとう深紅のドレスは、生肉の血で赤黒く汚れてしまった。


「……フィオナ、これを」


「あら。ありがとう、ソウマ。相変わらず、気が利くのねえ」


 フィオナ様は指先で武田君の顎を軽く撫でてからハンカチを受け取り、口の周りや手を清めた。


(……名前で、呼び合う関係なんだ)


 そんな些末な、私の疑問。この場には不要な物で、何事もなく会談は続いていく。


「少し、話を戻しましょうか。……そもそも、今回のような事態が起こった事について、そちら側からなんの謝罪もないのはどういうことかしら?」


「……フィオナ族長。今回、我々アドラー帝国はマール連邦に対し、一切の軍事行動を起こさない事を約束しましょう。最初から最後まで、ただ一つの貴族の家が愚かな行動をした。私達はそのように認識しているの」


 陛下のその言葉は、責任の所在をはっきりと明示するものだった。


「なるほど。つまり、”国”ではなく、”家”の問題だと?」


「ええ、その通り。私の名において、これ以上他の貴族が加担する事を一切認めないわ。何事も無ければ、あなた達にボズウェル子爵が敗れ、家は滅ぶ。……ねえ、スタリオン卿。あなたの名声を高めるには、手頃な相手じゃないかしら?」


「……さて、それはどうでしょうね。私はそもそも、名声という物に関心がないもので。ジェローム殿とチーズの話でもしている方がマシかなと思っていますよ」


 話題を振られた武田君は、まるで他人事のように答えた。

 この屋敷に滞在中、武田君とジェローム様はお互いの事を名前で呼び合う関係になっていた。


「くくっ。女王陛下、わが夫は欲の無い男。そのせいで何かちょっとした贈り物をやろうにも、苦労しているのです」


 グラーネさんの言葉に、武田君は小さく肩をすくめた。

 でもこの調子だと、ただ世間話をしただけで終わってしまう。


「……ねえ、ソウマ。あなたが以前から考えていた事、グウィネス陛下に進言してみたらどうかしら」


「フィオナ、余計な事を言うな。俺みたいな若造の戯れ言なんか、何の意味も無いだろう」


 フィオナ様と武田君のやりとりを聞いて、陛下は少し身を乗り出すようなそぶりを見せた。


「あら、何か私に提案したい事でもあるのかしら? いいのよ、スタリオン卿。言うだけならタダなんだから、言ってみなさい」


「……そうですか? それなら、私から提案したい事が二つ御座います。まず一つは、我ら二国間の交通事情の改善。協力して野盗を根絶し、希望者を募り、廃村に移住者を集めましょう。互いに移動中、補給や休憩が出来る場所を確保出来ます」


 それは、私たちが馬車の中で話題にしていたこと。

 陛下とジェローム様からは、マール側に応じる理由が無いと聞かされていた。


 そんな改善案をマールに住む武田君が提案した事実に、陛下とジェローム様からは驚きの表情が垣間見えている。


「……スタリオン卿。あなた達がそれを提案する理由は何かしら? 街道が整備される──それが何を意味するか、分かっていると思うけれど」


「ええ。街道が整備されれば、アドラーがマールに攻め入るのが容易となる。ですが私は、だからこそやるべきだと考えます。二国間の交流を増やし、結びつきが強くなれば──そのような事は決して起こらないと、私は信じています」


 ともすれば、ただの理想論だと笑われてお仕舞いな発言。

 それでも武田君はひたむきな表情で、陛下の返答を待っていた。


「……まあ、私達にとっては良いことずくめね。いいでしょう、ボズウェル子爵の件が片付いたら、具体的な話を進めていく事を約束するわ。それで、まだ何かあるのよね? まず一つは、なんて言い方だったもの」


 武田君は一つ頷くと、椅子から立ち上がった。

 そして背後の壁に貼ってある地図のある一部分を差しながら、提案を続けた。


「見えますでしょうか? この部分。大陸の西側、マール大要塞に連なる山々の麓。この辺りの管理を、我々に任せて頂きたいのです。理由としては、荒れた空白地帯の緑化作業の拠点にする為です」


 武田君が指で丸く囲んだ場所は、面積としてはそれほど大きくなかった。理由としては、平和的で全うなものだけど──


「なるほど、そちらが本命ね。……まあ、必要な事ではあるし、理解は出来る。けど領土の事となると、流石に慎重にならざるを得ないわ。それでも──我が帝国の威信にかけて、可能な限り実現への道を探っていきましょう。お互いに、ね」


「有り難う御座います、グウィネス女王陛下。流石は歴史あるアドラー帝国。寛大な慈悲を賜り、誠に驚嘆の念ばかりです」


 武田君は緊張していたのか、席に戻ると大きく息を吐いた。

 その様子を眺めながら、陛下は感心したように言った。


「エマちゃんのお友達って話だけど、そんな貴族みたいなおべっかも使えるのねえ。たまには必要よ、そういうの」


「はい、陛下。少しずつ、覚えていこうと思っております。……そういえば歴史に関して、陛下にお伺いしたい事があります」


「あら、何かしら?」


 落ち着いた様子で、何気ない話をするように武田君は陛下と談笑を始めた。


「私はこの世界に来てから神柱石や神能について、色々と調べております。マールにも資料は残っているのですが、アドラー帝国の方ではどうなのでしょう? 長く続いている帝国ですし、それらの資料が集められている場所など」


「確かに、あなた達の立場なら気になる事柄よね。うちの国だと、帝都の図書館とか……ジェローム、他にどこかあったかしら?」


 ジェローム様は顎に手を当てながら、言葉を絞り出すように答えた。


「そうですね……国内にある遺跡と……ああ、そうだ。宝物庫に、その辺りの幾つかの資料と遺物が──」


 みしり。


 音の発生源は、フィオナ様だった。

 彼女の右手がテーブルの端を掴んでいる。


 もの凄い力で掴んでいるのか、今も軋むような音がしている。

 今までの穏やかな表情は消え、全くの無表情──違う。

 彼女は、自身の内から湧いてくる怒りを抑えようとしている。


「ああ、そういえば……アドラー帝国の宝物庫には夫の──ヴァルディンの頭骨が収められているのよね?」


 きしっ、ぴき、ぱきっ。


 テーブルを掴む彼女の前腕が、膨れながら少しずつ変貌していく。

 鱗の面積が広がり、鋭い爪が伸びる。


「私がおばあさんだからって、知らないとでも思っていたの? 今でも時々、夢をみるの。フィオナ、ここは暗い、寒い──助けてくれって……!!」


 彼女は変化した腕をテーブルに叩きつけた。

 破裂音と共に、テーブルの四分の一ほどが吹き飛んだ。


「……っ!!」


 私は椅子から転げ落ちて、そのまま壁に背を付けてしまった。

 それでも陛下とジェローム様は、動こうとはしない。

 唇を引き結び、両手でテーブルをしっかりと掴み、大国の為政者としての矜持でもって恐怖に抗っていた。


「フィオナ様、どうかお静まりください!」


 控えていた竜人の男性が取り押さえようとしたが、彼女の腕の一振りで壁に叩きつけられる。


「グウィネス陛下、会談は中止だ! シノザキ、三人で早く馬車へ!」


 武田君の鋭い叫びで、私は立ち上がることが出来た。


「陛下、お早く!! エマも、さあ、逃げるんだ!!」


 ジェローム様に肩を掴まれた陛下と共に、私は談話室から逃げ去った。

 でも去り際に、一瞬だけ振り返ってしまった。


 無表情でこちらを眺める武田君が、そこにいたような気がした。






 ◆◆◆


 ……こっちの世界に来て、最初はずっと退屈だった。

 まあ向こうの世界でも、それは変わらなかったけどな。

 成績優秀、スポーツ万能、見た目も悪くない──そんな俺の周りには、いつも人がいた。


 俺はある日、偶然気づいたんだ。いや、見つけたっていうか。

 《神能》は他人から奪える。正確には、譲ってもらえるんだ。

 何人かのお友だちと”検証”して、やり方は分かった。

 今の俺には、とんでもなく強い力がある。


 それでもやっぱり、退屈だった。


 そんな俺に、あいつの話が聞こえてきた。

 クラスの中でも地味で、存在感の無かった奴。

 俺はあいつに、何故か同族意識があった。普段の生活は全く違うけど、俺と同じで空っぽな人間。


 ……あのお前が今は貴族で、結婚して子供もいるだって?

 ははっ! なんて滑稽で──なんて輝かしいんだ!


 会って話してみたいよ、お前と。

 でも今は、少し遠くから眺めるだけでいい。


 今、何をしてる? 何を考えてる?

 お前のことを考えるだけで、楽しくなるんだ。


 ◆◆◆

 ここまで読んでいただき、有り難うございます。


 もし宜しければ、ブックマークや星評価などして頂けたら小躍りして喜びます。

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