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4話 たどり着いたマール連邦と、それぞれの役割③

「ええ? 最初からこういう格好だったよ? だよねえ、イライザ」


「ソウマ様は長旅でお疲れでしょうし、幻覚を見ていたのではないでしょうか?」


 いやいや、待て待て。

 流石にこんな場所で、そういうアレが始まるような事はないはず。

 まあ単純にからかいたかったとか、そんな所だろう。


「……それじゃあ、とっとと髭を剃ってくれ。ほら、この姿勢ならどうだ?」


 胡座をかいた状態で湯船の縁に両手を添え、上半身を少し前に傾けた。


「おほっ! 綺麗な乳首してますなあー!」


「まあ、本当ね。可愛いらしい」


 片手で胸を隠し、二人を睨んだ。


「あはは、ごめんごめん! うん、その姿勢ならやりやすいね。んじゃ早速、始めちゃいますかあ」


 アルマは膝立ちになった後、お湯で濡らした両手で石けんを泡立てた。

 あっという間に、俺の顔は泡まみれになった。

 そして一度手を拭いた後、右手に剃刀を持った。


「よーし。それじゃソウマくん、なるべく動かないでねー」


 真剣な表情で俺の髭を剃るアルマ。

 お互いの顔が近くにあると、どうしても緊張してしまう。


 ここは気を紛らわす為に、剃られている自分の顔に意識を集中しよう。

 アルマは俺の顔の角度を微妙に調整しながら、丁寧な手つきで仕事をしている。


「イライザ、ソウマくんの顔に泡の追加お願い」


「はーい。……これでいい?」


「うん、ありがと」


 やがて一段落したのか、アルマがテーブルに剃刀を置いた。

 仕上げに俺の顔をお湯で濡らした布で拭くと、肌荒れ防止の為であろう塗り薬を剃刀が当たった場所に塗ってくれた。


 そして髭剃りが終わり、アルマは立ち上がって俺の顔を眺めた。


「……こんなもんかな。イライザ、ソウマくんに鏡で確認してもらって」


「分かったわ。……どうでしょう、ソウマ様。アルマは髭剃りに関してはかなりの腕前なので、満足して頂けたと思いますが」


 イライザが捧げ持つ鏡で確認したが、俺の顔は見事なまでにつるつるになっていた。

 侍女の仕事を辞めた後は、床屋でもやれば儲かりそうな腕前だ。


「いや、凄いな。全然肌も切れてないし、驚いたよ。ありがとう、アルマ」


「ふふーん、そうでしょう? それじゃまあ、髭剃りも終わったし。本来の目的を遂行しますか」


「……は?」


「そうね。その為に、こんな格好で来たのだもの」


 何か、雰囲気がおかしい。

 別に二人から敵意を感じているとか、そういう事では無いのだが。


「ソウマくんのそれ、見せてくれないかな? お願いっ!」


 可愛い仕草でアルマの指刺す先は、湯船の中。

 つまり俺の種馬としての資質を、事前に確認しに来たという訳だ。


「ソウマ様、出来れば大きくなっている状態でお願いします。その辺りはどうしても膨張率というか、個人差がありますので」


「絶対に嫌だ。お前らも仕事なんだろうが、俺にも羞恥心がある」


「あっ、そうだ。王女殿下は国のしきたりで、初夜の前に侍女による確認が必要なの」


「……それ、今考えたよな」


「ソウマ様、姫様はそういった経験がありません。なので事前に心構えをしておきたいとの事です。……いいですか、ソウマ様。姫様は王女である前に、一人の女性なのです」


 俺だって童貞だと言いたかったが、なんとなく恥ずかしくて言い出せなかった。


「まあ、ここまでは想定内。……イライザ、いい? やっちゃうからね」


「ええ。構わないわ、仕事だもの。それではソウマ様、失礼します」


「? 一体何を──」


 俺が疑問に思っていると、アルマがイライザの給仕服を掴んだ。


 ……そう、胸の部分を。


 そしてそのまま掴んだ手を思い切り下に振り抜き、給仕服を引き裂いた。

 現れたのは真っ白で、先端の色も薄く綺麗な大きな胸。


「! すまない、イライザ! すぐに服を」


「うわっ……」


「すごい……」


 俺は反射的に湯船の中で立ち上がってしまった。


 しかし当然、俺の分身も立派に立ち上がっていた。

 しばらくの間、異性の裸を視界に入れる機会が無かったのだ。

 ──これは、当然の反応。


「……いやいや、ソウマくん。そんなもの、うちの姫様にねじ込むつもりだったの?」


「はあ!? 別に好きでこんなものぶら下げてる訳じゃねえよ!」


「……そういう経験は私もそれほどありませんが、ソウマ様のそれはかなりの業物かと。まさに大陸随一の槍使いでしょうね」


 お堅い表情で俺を褒めているイライザだが、胸が丸出しのままだ。

 俺もつい凝視してしまっているが、いいのだろうか。


「……いやー、びっくりしちゃったよ。でもありがとね、ソウマくん。お詫びと言ってはなんですが……ほーれ、ほーれ」


 アルマはイライザの背後に回ると、胸を揉んで見せたり上下に動かして見せた。

 だが童貞の俺に、その光景は余りにも過激すぎたようだ。


「きゃっ!」


 可愛らしい声をあげたイライザ。

 不意の光景に我が身が反応してしまい、彼女の顔や胸元、服に……その、なんだ。

 俺の証が、残ってしまった。



「……んっ? ……えっ? ……お、おおっ! これは立派な種馬さんだねっ!」


「……イライザ、悪かった。久し振りに女の裸を目にしたら、つい……」


 まあ、現実世界で目にしたのは初めてだったのだ。

 仕方ないだろ、これは。


「ソウマ様。我々がこうなるよう仕向けたのですから、お気になさらず」


 イライザは特に怒った様子も無く、ハンカチで顔と胸を拭いている。

 給仕服の方も汚れているが、そちらの方は捨てるだろう。


「あ、あははっ! それじゃソウマくんも色んな意味ですっきりしただろうし、我々は退散させてもらう! さらばだ!」


「夕食の時間になったら、お呼びしますね」


 散々やりたい放題していった二人の侍女は出て行った。浴場に残ったのは俺一人。


(……これ、このままでいいのか?)


 ――まるで、白昼夢でも見ているようだった。

 でも、残念ながら現実は、確かにここにある。


 生命の残滓が漂う湯を暫く眺めた後、俺は湯船から上がった。


「王女様の為とはいえ、ここまでやれるのか。……侍女ってのも、大変な仕事なんだな」






「……はあ、美味しかった。ソウマもちゃんと食べた?」


「ああ、美味かったな。まあ欲を言えば、飲み物はお茶か水が良かったな」


「あー、確かに。仕方ないとはいえ、葡萄酒はまだ慣れないよねえ」


 色々あったが風呂に入り髭も剃りさっぱりした後、夕食を食べた。

 俺達の健康面に配慮してくれたのか、味も少し薄めで内臓に負担が掛かりにくそうなメニューだった。

 少し残念に思ったが、それでも久しぶりにまともな食事にありつくことが出来たのは嬉しい。


 飲み物に関しては、もう俺達が慣れるしかないのだろう。

 時代背景的に、真水よりは水で薄めた葡萄酒の方が安全というのは理解出来る。

 今は食後のコーヒーを飲みながら、談話室でマモルと世間話をしている所だ。


「……それにしても、食事中の王女様の発言には驚いちゃったね」


「ん? ああ……『それで、ソウマ。早速なのですが今夜、私の寝室に来られますか?』だもんな。いやいや、流石にもう少し心の準備をさせてくれと言いたくもなるだろ」


 向こうとしては差し迫った問題だし、早急にお役目を遂行しなければという事情は分かる。

 ……そう。分かるが、いくら何でも急すぎる。別にムードとかを大切にしたい訳ではない。

 パーソナルスペースが云々、俺としてはそっちの問題がやはり大きかった。


 そう思い悩んでいると、ドアをノックする音が聞こえてきた。侍女の誰かだろう。

 ここまで読んでいただき、有り難うございます。


 もし宜しければ、ブックマークや星評価などして頂けたら小躍りして喜びます。

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