多分、1センチくらい縮まったと思う
高校生になってから、もうそろそろ二年生に進級しようかと言う時期になって、ふと気付いたことがあった。
放課後、俺と同じ時間帯、同じ電車、同じ車両に乗る、同じクラスメートの女子が一人いる。
俺がそうだと気付いたのはつい最近のことであって、彼女は多分俺よりも先にこの事には気付いていたかもしれないが。
だが、だからと言ってどうという話でもない。
互いに名前と顔を知っているだけの、本当にただの、単なるクラスメート同士。
そもそも、ついこの間まで同じ車両に乗っていたことすら気付いていなかった程度の存在でしかなかった。過去形。
では今は――今この瞬間はどうなのかと言えば。
「……」
「…………」
「「………………」」
今日は他に空いている座席が無かったので、仕方なく……仕方、なく?隣合って座っているわけだが。
なんか、こう……気まずい。しかもなんか微妙に距離がある。
一緒に帰っているわけではないし、話し掛けるような間柄でもないし、だからって嫌ってるわけでもないし、向こうも俺のことを嫌ってるわけじゃなさそうだが……でもなんか気まずい。
チラッと横目で彼女の様子を見ようとしたら、
「あ」
目が合った。ので、思わず目を逸らしてしまった。
一体何をやってるんだ俺は、余計に気まずくしてどうする!
っていうか、向こうも横目で俺のことをチラ見してたよな?
多分、向こうもちょっと気まずい思いをしているのかもしれない。
……それにしても、ちょっと可愛かった、かも?
でも普段学校で顔を見る時は、普通っぽかったんだが……気のせいか?
ダメだ、確かめようにもさっきの気まずさのせいで目を合わせられない。
なんか気まずいし、なんか緊張するし、なんか可愛いし……
『次は、○○駅、○○駅〜……』
っと、そろそろ降車準備をしなければ。
座席を立って、
――でもその前に、少しだけ勇気を出してみよう。
目を逸らしていた彼女と目を合わせ直して、
「じゃ……じゃぁな」
これだけ。これだけで精一杯だ。
だが、彼女は少しだけ驚いて――
「あ……ま、またね」
ちょっとだけはにかんで、会釈してくれた。
電車を降りて、点字ブロックから離れてから。
「か……かわいすぎる……っ」
やばい、なんだ今のかわいさ。
今、俺の顔は真っ赤っ赤になってると思う。
ついでに動悸がする。
ってか、明日教室で会ったらどんな顔すればいいんだ?
ぐるぐると心と思考が渦を巻いていて――気付く。
あぁ、多分これ……"恋"だな……
――勇気を出してみたら、俺の初恋が始まった。




