魔法の秘密
恵美さんたちが帰り、店内には私たち三つ子と、塁くんたちだけが残っている。
「恵美さんたちが言ってた、‘‘マカナン・リザット・スー’’って、どうして分かったんだろう?」
「聞こえてたわけでもないと思うし……」
確かに、商品を作ったのは開店する前。
その言葉が、聞こえていた可能性は低いよね。
「だったら、咲希たちの行動とかに、なにかあるってこと……だよな?」
「う〜ん? そうかなぁ」
塁くんの考えに、私たちは首を傾げる。
「でも、そんなに変わったことはしてないと思うわ」
自分たちの行動だから、自分では分からないけど……。
「じゃあ、めぐめぐたちがいるときにやったこと、もう一回やってみて?」
「それ、いいかも!」
玲ちゃんの提案に、咲夜ちゃんが反応する。
塁くんたちが見てくれたら、私たちの行動が分かるもんね。
「じゃあ、お願いします」
合図がかかって、私たちは立ち上がった。
「ココ!」
暖ちゃんの大声に驚いて、ピタッと止まる。
「え……?」
「な、なにが」
私たちは混乱した。
何が変だったの?
「……立ち上がるとき、ふわってなってた」
「あぁ、言われてみれば、そうだったかも」
えぇ〜? ふわって?
私は信じられなくなって、余計に混乱した。
「えっとね、とりあえず後ろ向いて?」
言われた通りに、後ろを向く。
「ココ!」
今度は、玲ちゃんが声を上げた。
「な、なに?」
「どこが……」
後ろなんて、何もないはずなのに。
「背中に、なんかある!」
「本当だ、羽?」
塁くんたちが言ってる、背中って……?
「飛んで!」
「えっ? う、うん」
とりあえず、私たちはぴょんっとジャンプした。
すると。
「ふぁっ⁉︎」
突然背中を押されて、前に転びそうになる。
転んじゃう……! と、思ったとき。
「わぁっ!」
私の体が、宙に浮いて。
空を歩くように、飛んでいく。
「気持ちがいいわね」
「やった〜!」
咲希ちゃんや咲夜ちゃんも、楽しんでいるみたい。
……そういえば、塁くんたちは。
「凄い……」
「いいなぁ」
みつばさカフェの窓から、私たちを見ている。
「そろそろ戻らない?」
「えぇ〜? もっとしようよ!」
咲夜ちゃんは、まだ戻りたくないみたい。
「じゃあ私も、まだここに居るわね」
「分かった。私、先戻っておいていい?」
「いいわよ」
そして、私はよつばさカフェに戻った。
「おかえり、すごかったね!」
「ていうか、店開けたばっかなのに、そんなしてていいの?」
言われてみれば……。
「ちょっと、閉めよう!」
「あぁ〜」
扉を閉めて、‘‘closed’’の看板を下げる。
勿体無いなぁ。
「咲来、ちょっといい?」
「え? うん、いいけど……」
暖ちゃんに呼ばれて、私は暖ちゃんと奥のカウンター席に向かった。
◇◇◇
「それで、なに?」
「あ、えっとね」
そう言って、暖ちゃんは鞄の中から白紙を取り出した。
「さっき、鳥みたいに空を飛んでたでしょ?」
「う、うん」
あのことについて、何か知ってるのかな?
「それができる人ってね、ごくわずかなの」
「え? そうなの?」
ごくわずかっていうことは、私たちが特別ってこと?
信じがたいなぁ。
「うん。それで、その人たちのことを──」
「暖〜そろそろ帰るぞ〜」
「あ、分かった」
塁くんに呼ばれて、暖ちゃんが帰る準備をする。
「咲来、ごめんね。続きはまた今度、話すから」
「うん。ゆっくりでいいよ」
もっと話したかったけど、仕方ないよね。
店内には、もう咲希ちゃんたちが帰って来ていた。
そして、私たちは入口まで三人を見送った。
「ありがとう〜お邪魔してごめんね」
「ううん! 大丈夫だよ」
そんな、むしろ来て欲しかったし、ね。
「バイバーイ!」
「またね〜」
そして、私たちは店内に戻った。