翼人奴隷の幸せ
とある屋敷から救い出された翼人女性の奴隷は違う屋敷へ運ばれ、彼女が目を覚ました時、柔らかなベッドの上であった。
「ここは、どこ?」
彼女は奴隷の時に着ていた服が変わっているのを気付いた。
「私、鞭を打たれて、ここは、死後の世界なの?」
彼女は辺りを見渡し、初めて見る豪華な部屋に驚きながら、彼女は自分の体を確認した。
服の袖を捲ると今まで受けた鞭の後がくっきりと残っていた。
「私、死んだわけではないみたいね。でも、そうなると、どうして、私は生きているの」
すると、コンコンっとドアのノック音がした。
「なに!?」
ドアから人間の若い男が銀のお盆に温かなスープを持って部屋に入ってきた。
「やぁ、もう目覚めたんだね。食事を持ってきたよ」
「あなたは誰」
「僕の名前はエビィ、君の名前は?」
男はベッドの隣に置かれていた机に盆を置き、椅子に座った。
「私は、アニエル」
「アニエル。いい名前だね。さぁ、今まで眠っていたからお腹空いてるだろ。あっ、毒は入ってないよ。怖がらないで、ほら!」
男は私の目の前でスープを一口飲んだ。
「ね、毒は入ってないから安心して食べて」
私はお腹が減っていたので、スープを飲んだ。とても、温かいスープ。久しぶりの温かな料理に、私は目から涙が溢れた。
「温かい、美味しい」
男はハンカチを持って私の涙を拭った。
「美味しいスープがしょっぱくなっちゃうよ。もっと、食べるかい? 沢山あるから、慌てて食べなくて大丈夫だよ」
「うゔぅ、どうして、私、奴隷、なのに」
「奴隷なんか関係ないさ、美しい君が、あの男に酷い仕打ちを受けていたから、僕は助けたかっただけさ」
私は泣きながら、温かなスープを食べた。そして、私はいつの間にか眠ってしまった。
次の日、私は朝日を浴びて目覚めた。すると、男がカーテンを開けていた。
「おや、やっと起きたんだね。アニエルおはよう」
「夢じゃ、なかったんだ」
「もしかして、昨日の事が夢だと思ったのかい? 大丈夫、これからは、その夢が現実になるんだよ」
「エビィ、さま、どうして、私を助けてくれたのですか」
「ん? それは、君がとても美しいからさ。僕はね、これほど美しい人を見たことがないんだ。だから、僕は君を助けたんだ」
私が、美しい、一族に厄介者とされてきた、この私が、妹の代わりに奴隷商人に捕まっても、同胞は誰も私を助けてくれなかったのに、どうして、この人は。
「私が、美しい。やめてください、私はそんな美しくない! 私は一族でも、最も醜い」
男は私を抱きしめた。男に抱きしめられ、恐怖を感じるよりも、彼の逞しい体や体温が温かく、そんな彼に安心感を感じられた。そして、私はまた涙を流した。
「大丈夫、大丈夫だよ。僕が付いている。それに、君はとても美しいよ」
私の人生で初めて私を助けてくれる人が現れた。
「どうして、わたし、なんかを、どうして」
彼は優しく私の背中をポンポンと叩いた。
私が泣き止むまで、彼は私を優しく抱きしめ、私を慰めてくれた。
「エビィさま、見苦しい姿を見せてしまい。申し訳ございません」
「大丈夫だよ。それより、泣きすぎて目が腫れてしまっているじゃないか。ちょっと待っててね」
男は部屋から出て、数分後、水に濡らしたハンカチを持ってきた。
「これを目に当てれば腫れが引くからね」
「ありがとうございます」
「アニエル、君がどんな人生を歩んだのか、僕には、まだ、わからない。だから、これから、少しずつ僕に君が今まで体験したことを話して欲しいな」
「私の人生、私は生まれて」
「今じゃなくていいよ! 君は泣いて疲れただろう。今日はゆっくり、ベッドに横になった方がいい。明日、医者を呼んで君の体を治療してもらうからね。夕食はメイドに持ってこさせるから、ちゃんと食べるんだよ」
男はそう言って、部屋から出ていった。あの男はどうして、ここまで、私によくしてくれるのだろうか、私は醜い、奴隷なのに、私を抱きしめ、慰めてくれて、私を美しいなんて、彼は一体、私に何を期待しているの、私が出来ることは空を飛ぶことしか、ないのに。
その次の日、医者が来て私の体を診察した。医者から塗り薬が出され、エビィ様は、私が届かない背中に塗り薬を塗ってくれた。
「痛かっただろう。傷に染みるけど、傷を治すためだ、我慢してくれ」
「はい。ゔっ。い、痛いです」
「よし、この痛みを耐えたアニエルにご褒美の飴をあげよう」
「ありがとうございます」
彼から飴を貰い、食べると口の中で甘さが広がり、とっても、美味しかった。
それから、エビィ様は私の背中に塗り薬を塗り、頑張ったねと、飴をくれた。私にとってそのエビィ様に会う時間が今までの人生の中で幸せな時間だった。
それから、エビィ様と共に過ごし、エビィ様を抱き抱え空を飛び、エビィ様を驚かせたり、エビィ様の好きな事を聞いたり、私の過去を話したり、私にとって、エビィ様はこの世で最も大切な人となった。
「エビィ様、今日は何処へ行くのですか? 私にエビィ様の護衛をさせてください! 空からエビィ様を守りたいのです」
「アニエル、僕は君を危険な目には合わせたくないんだ、僕にとって君は大切な人だからね」
エビィ様は私を抱き寄せ、頭にキスをしてくれた。
「エビィ様!?」
「大切な女性に護衛なんてさせるわけないだろ。ちなみに、今日は囚われている魚人が見せ物のように扱われているパーティーへ向かい、彼を解放しにいくんだ。一筋縄とはいかなそうだけど、僕なりに頑張ってみるよ」
彼と言うことは男ってことよね? 女じゃなくて良かった。
「魚人ですか、どうして、陸に魚人族が」
「さぁ、どうやって捕まったのかは彼に直接聞くしかないからね。それじゃ、行ってくるよ」
エビィ様は私の頬にキスをして、パーティーへ向かったのでした。
エビィ様、私は貴方のことが好きです。いいえ、私はエビィ様な事を愛しています。私に出来ることなら、なんでも捧げたいそれぐらい、私は貴方を愛しています。
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