紫水VS灰土
紫水と灰土さんは向かい合い少しずつ距離をとっていきました。
私と緑癒に庇護をかけておきましょう。
喧嘩の巻き添いで死にたくないですからね。
「灰土やる気なんだね〜。俺に勝てると思うの〜? 弱いから無理でしょ〜」
「長ではなくても俺はお前に負けるわけがないだろ。俺の方が日々鍛えているからな。毎日昼寝ばっかりしてスキルに頼っているお前なんか俺の敵ではない」
「へぇ〜、それじゃあ〜、俺もその言葉そのまま返してあげるよ〜」
紫水の周りに5個の小さな丸い水の塊が現れ、灰土さんに向け水の塊から一気に水を噴出した。
灰土さんは紫水の攻撃を弾き返していた。外れた水が灰土さんの後ろにあった岩に直撃し、岩を粉砕した。
岩を一撃で粉砕ですか、水にあんな使い方があったのですね。これからは、紫水に喧嘩を売るのはやめた方がいいですね。あの一撃を喰らったら私は即死しますね。
それにしても、灰土さんあの巨体で俊敏な動きが出来るのですね。ですが、鎧のように付けた土が紫水の攻撃を弾き返す事ができる防御力があると言うことなのでしょうか?
うーん、灰土さんは防御力特化した個体ということですかね? 紫水の攻撃を悉く跳ね返している。土なら水に当たったら流されると思ったのですが。
いや、これは跳ね返しているのではなく水を受け流しているのですね!
『藍介さん! 藍介さん! 止めた方がいいですよ』
『なかなか、見応えのある喧嘩ですね』
『なに、呑気な事を言っているのですか! ひぇえ!』
紫水の水攻撃が緑癒の羽の先端を軽く掠った。
『危なかった。僕の羽が穴だらけになる前に早く喧嘩を止めましょうよ』
『この喧嘩の勝者が気になるのですが』
『危ないからダメですって、もう、藍介さんが言わないなら僕が言います』
緑癒はそう言うと喧嘩をしている2人に話しかけた。
今は話しかけない方がいいと思うのですが。
「紫水、灰土さんこれ以上喧嘩はやめてください。主人様が知ったら主人様に怒られちゃいますよ」
「うるさい黙っていろ」
「うるさいな〜、緑癒〜黙っててくれる〜」
緑癒は2人に睨まれ私の所に戻ってきた。
2人は今、喧嘩に夢中になっているので、そんなこと言ったら逆効果ですよ。
『怖かった』
『そう言われると思ったから言わなかったのですよ』
「ずっと守ってばっかりじゃ俺には勝てないよ〜」
「それなら俺の防御を上回ってみてから言ってくれないか」
「仕方ないな〜、そろそろ本気出そうかな〜」
「今まで本気だったの間違えじゃないのか」
紫水は水の塊を15個に増やし攻撃したが、灰土さんは水攻撃を受け流した。
2人が喧嘩して30分ほど経ち、私と緑癒は安全な場所で喧嘩を眺めていました。
『藍介さん、どちらか勝つと思いますか?』
『2人ともタフですね。うーん、出来れば灰土さんが勝って欲しいですね。紫水は水を使い攻撃し続けていますが、有効打はなさそうです。灰土さんは防御する事を優先しているみたいなのですが、なかなか紫水に攻撃できていませんね』
『僕は争い事が嫌いですが、こうやってみると見応えありますね』
『確か、前に人間の文化について本で読んだことがあるのですが、闘技場という場所があり、そこで人間たちは殺し合いをしているみたいですよ』
『殺し合いをしているのですか? 相手を食べるために?』
『いいえ、闘っている姿を見世物にしているのです』
『見世物ですか? 食べるために戦うわけじゃないのですね』
『まぁ、お金を得るという面では食べる為と捉えられることも出来ますが、闘技場、人生で一度は行ってみたいですね』
『藍介さん案外血の気が多いのですね』
『闘い方を観察する事は生き残る上で大切ですからね』
紫水と灰土さんの喧嘩は1時間経っても勝負がついていませんでした。
「くそぉ〜、灰土の奴〜、攻撃受けてもどうしてあんなに元気なんだよ〜」
「手数が多いな、これじゃ紫水に近づけない」
『藍介さん、この喧嘩いつまで続くんですかね?』
『流石に長いですね。止めましょうか』
「紫水、灰土さんもう喧嘩はやめましょう」
私は愛シリーズのスキル『愛祭』を発動しました。
『愛祭』とは私の愛する人との記憶を周りにいる者達に直接脳へ送り込みその出来事を体験させるというスキル。
3人には私が主人様の胸の下敷きになった時の記憶を体験してもらいましょう。
緑癒も巻き添いですが、まぁいい思いをするのですからいいですよね。
本当はこのスキル使うの嫌なんですよ。
まして、主人様の胸の柔らかさを知った時の記憶。
男を止めるには丁度いいですが、くぅ、使いたくない。
でも、使うしかない。
「ふぁ!? 主人様〜♡ そんな〜柔らか〜い♡」
「な!?」
「はぁうぅぅぅ!? 主人様!? どうして僕の上に!?」
紫水、灰土、緑癒は主人様の胸の感触を体験し固まっているみたいですね。
それでは、私もあの時の記憶を追体験するとしましょう。
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