お風呂一緒に入る約束ってしたっけ?
カストルのデートを終えて次の日、凪は布団の中で眠っていた。
「主人様、主人様、おはよう」
誰かが体を揺すってくるので、凪は仕方なく目を開けた。
「ゔっ、うーん、あと、5分」
寝ぼけていたので人の裸が見えて、ガールゥダが勝手に布団に入って来たんだなとだけ思い、また、凪は眠りについた。
「主人様! あー、寝ちゃったかぁ。それなら、後5分待とう!」
そして、5分後、布団の侵入者は、もう一度、凪の体を揺すった。
「あー、もう、ガールゥダさん、勝負なんてしないわ!よぉ?」
凪は起こされてガールゥダに腹が立っていたが、目の前には、髪が真っ白、肌の色も真珠のように白く、瞳は金色で、中性的な整った顔立ちの大人の色気を放つ女性がいた。
「えーと、貴方、どちら様? どうして、私の布団の中にいるの?」
彼女は女性としては、少し低めの声をしていた。
「やっと起きましたか! 主人様!真白です! 虫人に進化出来ました!!!」
「真白!虫人に進化出来たのね!!!おめでとう!!!」
凪は真白に抱きつこうとした時、ある、違和感を感じた。
「ねぇ、真白の胸真っ平と言うか、筋肉があるような?」
凪は真白の体の下半身を見た。すると、そこには、女性には生えていない物が、真白には生えていた。
「ある!?!??!??? え!!!! え????」
真白は女の子だと思っていた凪にとって、目の前にいる真白が男性だと言う事が受け入れられず、真白の顔を見ると、女性、でも、体は男性によって、凪はとてつもなく混乱した。
「主人様、 真白が虫人になったら、主人様のお背中流す約束出したよね。さぁ!主人様! お風呂行きましょー」
「待って、真白って女の子よね?」
「ん?違いますよ。真白はオスです!」
「オス!? え!? あんなに可愛い声なのにオス!?」
「あれ? 主人様どうかなさったのですか? さっ、さあ! お風呂!お風呂!入りましょー」
「うそー!!!! え、そしたら、え!?」
「もう、主人様、真白のかっこよさに驚いちゃったんですね。真白も虫人となって、すぐさま鏡を確認したら、かっこいい人が立っていて真白は驚きました!」
「その、真白、ごめんなさい。お風呂の約束は無しで、その、ごめん、パンツ履いてくれない?」
「お風呂の約束、無し、主人様は、真白に、嘘をついたのですか」
真白はボロボロと大粒の涙を流し始めた。
凪に罪悪感が押し寄せたが、それでも、男の真白とは一緒にお風呂に入れないわよ!と心の中で叫んだ。
「主人様、真白は、主人様のお気に入りなんですよね。だから、男湯に入ろうとした真白を呼び止めて、女湯に入れさせたんですよね。なのに、どうして、約束まで、したのに、真白、とっても、とっても、楽しみにしてたのに」
「真白、ごめんなさい。私、てっきり、真白は女の子だと思っていたの! あのね、私、思念伝達で聞こえる声で性別を判断してて、真白の声があまりにも可愛かったから、女の子なんだって勘違いしていたの!」
「そんなぁ。真白は、真白は、今まで、主人様のお気に入りだから、オスの長達でさえも入れない女湯に入れたと思っていたのに」
凪は頭をフル回転させて、この状況の突破口を考えた。
「分かったわ、お風呂一緒に入りましょう!」
「本当に!!!」
真白の顔が一瞬で晴れた。
「ほら、そうと決まればお風呂行くわよ!」
「はーい!!! 主人様とお風呂〜」
2人は家の風呂場へ向かい、先に真白が風呂に入った。
「主人様、まだかな、まだかな、真白は精一杯! 主人様の隅から隅まで体を洗ってあげないと!!!」
真白の様子を見た凪は、秘策を実行した。
その、秘策とは、水着である!
「お待たせ、ほら、真白これ履いて」
真白に黒い水着を渡した。
「なんで! 主人様、下着のままだとお風呂入れませんよ!!!」
「いいえ、これは、水着です!!!」
「なっ!? でも、でも、ほら、水着で洗えない部分が出来ちゃうじゃないですか、それなら、水着は着ない方が」
「私がいつ、裸で一緒にお風呂に入ると約束したかしら? お風呂に一緒に入りましょうしか、聞いてないわ!それなら、水着の着用可能よ!!!」
「分かりました。……水着姿の主人様を独り占めできるから、いいか」
「ほら!思う存分洗いなさい!」
「はーい!」
こうして、秘策によって最低限体を隠すことに成功した凪なのでした。
浴槽に入る時、通常の家庭の浴槽の大きさである為、真白が先に入り、凪が真白の上に乗る形となった。
真白は嬉しそうに凪を抱きしめ、凪の肩に顔を乗せた。
「主人様〜。大好きです」
「真白の事は友達として、好きよ!」
「真白は、主人様の恋人、いえ、愛人になりたいのですが、どうすれば、主人様の愛人になれますか?」
「愛人!? いや、その、真白は私の愛人になりたいの?」
「はい、愛人は夫よりも、愛される人なのでしょう。なら、真白は夫よりも、愛人になりたいんです」
「へぇー、そう、なんだ。でも、私、今は、愛人を作ろうとか考えてないから、真白が私の愛人にはなれないかな」
「真白はもっと、主人様に愛されたいです。でも、真白には、藍介様のように賢くないし、紫水様みたいに水を操る力があるわけでもない。灰土様みたいに屈強な体でもなければ、緑癒様のぷりっとしたお尻じゃないし、それに、イデアおじちゃんみたいに不死身じゃないし、真白には何にもないんです」
「そんな、事ないわよ。真白は頑張って勉強してたじゃない」
「はい、でも、真白は毒を作る事しかできないし、それも、特定の毒しかできなくて、殺傷能力が低い毒しか作れないんです」
「殺傷能力って、まぁ、その、自分が得意な事を伸ばせばいいんじゃないかしら。それに、もう15分経ったし、出ましょうか」
「え、もう、出ちゃうのですか。真白はもっと、もっと、主人様を抱きしめたいのに」
「のぼせちゃうからダメよ。ほら、出ましょう」
「はーい」
凪と真白はお風呂から出て、凪は体をタオルで拭くと速攻自分の部屋に行き服を着替えて、真白にはパンツと黒の浴衣を渡した。
真白は浴衣に着替えると、主人様の部屋に向かった。
「主人様、ご飯食べましょー」
すると、主人様の部屋には褐色よりも黒い肌をした、無精髭のパンツだけを履いた男が立っていた。
「よお!真白!」
「も、もしかして、国常!!!」
「どうだ、この渋さ! かっこいいだろ! この姿なら、ミーライから逃げれるだろ!」
「黒常、おじさんじゃないですか。これは、ミーライちゃんが逆に逃げますね」
「よっしゃ!!! その言葉を待っていた! ミーライコールからこれでおさらばだ!!!」
「ミーライコールって、それだけ国常には嫌だったって事なの? そう言う割にはミーライちゃんと話すの楽しそうにしてたじゃない」
「俺はボン!ギュッ!ボン!のナイスバディの女しか興味ないからな! 例えば、紅姫だな!」
「どうして、男の人ってそれしか言わないのかしらね? ライネルも花茶に言ってたし」
「真白は主人様一筋です!!!」
「真白も相変わらずだな、しかも、速攻で約束を叶えに行くなんて」
「約束は約束ですから、真白は満足です」
「主人様も災難だな」
「まぁ、なんとか、なったし。2人が虫人になったと言う事は、桑胡達も虫人なれたのかしら?」
「えーと、桑胡はまだだったな、たしか、俺達以外だと、狂子が虫人になってたな」
「それなら、繭から出た子達を集めて欲しいんだけど、お願いできるかしら?」
「真白に任せてください!!!」
「分かった。1時間あれば集められると思う」
「1時間後に庭に集合で、よろしくね」
「はーい!!! 真白、頑張ります!」
「んじゃ、俺達はあいつらを探しに行って来ます」
虫人となった黒常と真白は他の虫人になったであろう、仲間達を集めに向かったのでした。
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