悪魔と魔石精霊
カストルとのデートを終えて次の日、居間では、カストル、ガールゥダは正座で座り、猫次郎は『いたずら猫』と書かれたネームプレート付きの首輪をして、カストルとガールゥダの隣に座っていた。
2人と1匹の正面には主人様とパラディンボーンが立っていた。そして、庭の方にはアとバーン、アモン、リードがその様子を見ていた。
「塔が崩壊したせいで瓦礫がスケルトン達の家に被害が出たという事で、カストルさんとガールゥダさん、そして、猫次郎には、家の復旧作業を行ってもらいます。そして、今後はパラディンボーンさんが3人の監視を行ってもらいます」
パラディンボーンはホワイトボードに文字を書いた。
『これからは、何かやる際は必ず俺に話すように、それと、猫次郎、勝手にスケルトン達を操るんじゃない。あと、ガールゥダさんは必ず服を着るように』
「俺には服はいらん!」
「流石に下半身は隠せにゃ〜」
庭で見ていた小さくなったアモンはバーンの尻尾を齧りながらその様子を楽しんでいた。
「愉快、愉快、にしても、ワイバーンの骨はうまい!」
「くそぉ、俺っちの尻尾がガジガジ食われてるっすぅ」
「まぁまぁ、尻尾の先の骨だけで良かったじゃないか、アモンじいちゃんなら全部食べられてたかもだし、良かった良かった」
「良くないっすよ! アさんが助けてくれなかったら、俺っち、今頃、悪魔の腹の中、こ、怖いっすぅ!」
「まさか、悪魔を召喚するとはね。キングリッチに進化したとはいえ、下級悪魔じゃなくて、上位悪魔なんてね……。で、アモン、ここにいつまでいるのかしら? さっさと家に帰って欲しいんだけど」
「おい、我は久しぶりに外の空気を吸ったと言うのに、魔石精霊は心が狭いな、まっ! それを言うなら、お前はいつになったら神になるんだ? 何度も神のクエストを失敗し続け、もう時間がないと言うのに」
「悪魔には言われたくないわよ」
「そもそも、お主は悪魔の力を借りていると言うのに、その悪魔である我を除け者にするのはどうかとおもうのだがな」
「仕方ないじゃい、弟の名前が一向に決まらなかったから、ダンジョンの主が決められなかったのよ」
「それで、助け舟であいつと契約したと、にしても、我は封印されていたが、あいつの噂話がちょくちょく来ていてな、あいつ、妻に逃げられたらしい、あいつの事だから、妻を必死に繋ぎめると思っていたのだが、まさか、本当に逃げられていたとはな! 愉快!愉快! あの異世界人は可哀想だ、本来の役割を果たす者に責任を押し付けられ、自由に外を出ることもできずにいるとはな、あの子はよくやっておるわ……。なぁ、我があいつを呼び出し、あの子の責任をあいつに押し付けてみても、愉快そうだな!」
「彼に現在の状況を知られたら、あの子が殺されてしまうかもしれないから、やめて」
「ほぉ、殺されるか、我の考えだと、逆だな」
「逆?」
「あの子はあいつに好かれる。と言うより、あいつの配下達があの子を気にいると思うな」
「そうかしら?」
「まぁ良い。にしても、カストルがあの子に恋をするとは、愉快!愉快! カストルがこの場に留まると言うのであれば、我もここに留まることとする。それに、うまい飯もあるからな!」
アモンがバーンを見つめた。
「俺っちをうまい飯なんて言わないで欲しいっす! 桑胡ーー!!!! 早く、繭から出て来てー!!!俺っちを守って欲しいっす!!!」
「そういえば、庭の所々に繭が置いていたが、あれはなんなんだ?」
「虫達が進化してようとしているのよ」
「進化か、これ程までに急激な進化をする種族など、見たことがなかったが、そうか、これもまた、あの子の力というわけか」
「私もうそろそろ、神のクエストに挑戦するわ」
「おっ! 神のクエストを受注するのか! 我も参加させろ、クソな神を我が正面から叩き潰してやりたいからな!」
「でも、繭になった子達が無事に進化してからにするわ。その方が戦力的に申し分ないし、私も次に進まなきゃ」
「そうだな、焦って神のクエストを受注して速攻森を破壊されるよりも、確実に対抗する力を蓄え準備した方が良いからな! あの時のお主の失敗ぷりは愉快であった!」
「 あなた!この前の神のクエスト見てたの!」
「そりゃ!愉快な事をしていたからな! 蝗害で跡形もなく森を食われる様はもう、愉快!愉快! そもそも、守護者を作り出したと言うのに、森を守るのではなく、人間を守りに行きおったからに、もう、愉快としか言いようがないわ!!!」
「真実だから余計に腹立つわね」
「我は一度守護者と戦ってみたいな、不死身は灰となっても蘇るのか気になっているんでな」
「やめときなさい。あいつも凪ちゃんの夫なのよ」
「何!? 不死身の獣すらもあの子の夫なのか!?」
「そうよ」
「愉快!!!愉快!!! カストル! なかなか、すごい女を好きになったものだ!!! もう、何故、我をもっと早く出さなかったのだ! こんなに愉快な事はないと言うのに!!!」
「あんた、楽しいことしかしないのね」
「そりゃあ!当然!我は悪魔!悪魔とは人間よりも欲に忠実だからな!」
「あっ、説教終わったみたいっすよ」
「もう、終わってしまったのか、残念だ。もっと、怒られていいものを、あの子はちと、優しすぎるぞ」
「アモン、あなたはどうして凪ちゃんに肩入れをするのかしら」
「そりゃあ! 契約者の好きな女だからな、まぁ、もう一つは、勝手に異世界に飛ばされたあの子が可哀想だと思ったからだな」
「そう、業火狼アモン。あなたと協力関係になるって事でいいわよね?」
「ほう、我の名を口にするとは、そうそう、アよ。今回の神のクエストを受ける際、深淵アビーサを呼んだ方がいいぞ、あのクソ神のクエストは今回ばかりは、一筋縄ではいかんからな。あと、もう1人、いや、もう1匹を見つけ出さねば、この地上は炎の海となる」
「どうして、悪魔であるあなたがその事を知っているのよ。そもそも、今まで封印されていたんでしょ」
「我は封印されようとも配下は地獄にいる。彼らから情報を得る事はできるからな。地獄も動き出して来ている今、アよ。我が仲間でよかったな!」
「ムカつくけど、頼りになるから余計にムカつく」
「愉快!愉快!!! さぁ、カストルをからかいにいくか!」
アモンはバーンの尻尾の骨を口に咥えて、庭から家に入って行った。
「いつまで俺っちの尻尾齧ってるんっすか!!! 返せっす!!!」
バーンがアモンから尻尾の先を取り返そうとしたが、返り討ちにされ、アモンは2本目をゲットした。
「ぐはぁ!!!! 俺っちのしっぽぉおおお!!!!」
「悪魔が仲間ね。前の私だと嫌がったと思うけど、今はそれどころじゃないし、私も、前に進まなきゃ」
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