塔を守るドラゴン
巨狼の背に乗ったカストルはアモンとリードに今までの経緯を話した。
「なぜ、今まで我を呼び出さなかったのだ! 悔しい、悔しいぞ、そんな面白い事を逃していたなんて、弱い精霊などより、我の方が適任であろうよ!」
「あの時はリードを召喚するだけで、精一杯だったからな、キングリッチに進化してやっと、アモンを召喚できる魔力量になったんだ」
「そうか、にしても、カストルに春が来たのだな。復讐に燃えし、小僧が恋、こんな!愉快な事! これからは、首を突っ込ませてもらうからな!」
「カストル〜、アモンじいちゃんを呼ばない方が良かったんじゃないか?」
「大丈夫、何かやったら、もう一度、封印だからな」
「封印か、まぁ、地獄に帰るよりかはマシだな」
「地獄ってそんなに嫌なところなのか? 俺は熱い所が好きだから一度、行ってみたいな」
「お主な、地獄とは罪人魂の保管場所、罪人に常に罰を与え苦しむ様を見続けるだけだ。我にとっては、愉快ではない場所でな、そもそも、我は働きたくないし、あそこで働く者たちは、天空にいる神よりも勤勉な者達でもあり、力も同等なのだが、真面目すぎて落ちた者や、力に酔った愚か者など、様々、それに、精霊など地獄に落ちたら、我と同じ悪魔と化すからやめておけ」
「はーい、悪魔にはなりたくないからな」
「我はそれを知らずに悪魔に啖呵を切って、地獄へ行った結果、こうなったのじゃがな!」
「反省してないなこいつ!」
「無論! 我は反省なんかせん! やりたいことをやるだけだ!」
「もうそろそろ、着くな、アモン、体を小さくしてくれないか」
「何故だ? この姿が一番、我をカッコよく見せるのに適していると言うのに」
「凪さんはかっこいいより、可愛いが好きだからな」
「女に媚を売るために我を小さくなれと、あい、分かった。どのぐらい縮めばいい?」
「俺が抱っこ出来るぐらいで」
「お主、そんな細腕で我を抱っこ出来るのか? 」
「そんなに重たくないだろ」
カストルはアモンから降りて、アモンは体を縮め、アモンは子犬ぐらいのサイズとなった。
「うん、この小ささなら、凪さんが可愛がるだろ」
カストルはアモンを持ち上げようとした時、アモンが重たすぎて持ち上げることさえできなかった。
「おい、重たすぎるだろ!」
「どれどれ、俺も試す! よっこいしょ!」
リードも試したが、アモンが重たく過ぎて、持ち上げられなかった。
「重っ! アモンじいちゃん、食べ過ぎだぞ」
「いや、縮む事は出来るが、元々の体重までは、どうしようも出来ぬからな。我はカストルが腰を抜かさないか心配であった」
「いや、絶対に、俺達が持てずにいるのを楽しんでいただけだろ」
「欲を言うのであれば、カストルが腰がぁ、と、腰に手を当てて、腰の痛みと戦う姿を我はみたかったな」
「この悪魔!」
「我は悪魔だぞ!」
「それで、敵の本拠地近くまで来たけど」
リード達は物陰からスケルトン居住区に出来た塔を見ていた。
「まさか、あんな塔が建てられていたとは思いもしなかった。しかも、塔を守っているのがバーンだったなんて」
「あの時のスケルトンワイバーンか、あいつ、なかなか良い奴だからな、倒すの気が引けるよな」
「バーンは俺の親友だから、手加減をしたいんだが、アモン、ヨダレを垂らすな」
「ワイバーンの骨は濃厚な味と噛み心地が良くてな、あのスケルトンワイバーン我にくれぬか? うまそうだ」
「ダメだ、親友は食わせない」
「ちぇっ、戦う時に少しだけ、ほんの先っぽでもいい、齧って良いか?」
「ダメだ!」
「ふん! ならば、我は戦わぬ!」
「大丈夫、バーンなら対話できる」
「それなら、いいと思うけど」
カストルは塔の入り口を守るバーンに会いに行った。
「バーン、すまないが、後ろの塔の中に凪さんは、いるか?」
「おっ! やっと、カストル来たっすね! よっしゃ、俺っち塔を守るドラゴンやるっすよ! かかってこい王子カストル! ドラゴンである、俺っちが相手だ!!!」
「王子カストル? バーン何を言っているんだ」
「いやぁ、俺っち猫次郎にまた召喚されちゃって、姫様を攫う役が終わったと思ったら、次は、塔を守るドラゴン役を押し付けられちゃったす。だから、カストルには申し訳ないっすけど、俺っちと勝負っす!」
「ほーら、戦う羽目になったじゃないか」
「おっ、あの時の精霊さんっすね! 久しぶりっす」
「バーンって名前になったんだな、俺はリード! よろしくな」
「よろしくっす、だけど、今は敵っすから、手加減しないっすよ!」
バーンは自身の魔力を込めた咆哮をし、カストルとリードは耳を塞いだ。
「なかなか、強い、ワイバーンだな、と言うか、あいつ、半分ドラゴンの魔力が混ざってないか?」
アモンにはバーンの咆哮が全く効いていなかった。
「アモンじいちゃん、耳塞がなくて大丈夫なの!?」
「ふ、我は強いからな、この咆哮ぐらい、余裕だ!」
「仕方ない、アモン! バーンの尻尾を齧っていいから力を貸してくれ! この咆哮をなんとかしなきゃ、詠唱なんて出来ない」
本来のアモンなら、やはり、我の力が必要なんだなとか、煽るような事を言うが、今のアモンは、何も言ってこなかった。
「俺が、バーンをやっつける!!! てか、うるさい!」
リードがバーンに向かって業火を放った。
「炎は俺っち効かないっすよ!」
バーンはパクッと業火を食った。
「え?」
「そんな芸当あったのか」
「なかなか、美味いっすね。それじゃ、お返しするっす!」
バーンはリードの業火に自身の魔力を上乗せした炎ブレスを吐いた。
「俺の業火が!!!」
リードとカストルは炎のブレスの射程距離から逃げた。
その場に留まっていたアモンは逃げたカストル達の方を向くと、目を輝かせてカストルにねだった。
「やはり、こやつを我にくれ! 最高の飯だ!」
「なんだ、ちっこいの、俺っちを飯って、そっちが俺っちの飯っすよ」
バーンは小さな狼に威嚇した。
「ふん、小童が、我を誰だと思っておる」
「子犬なのに、態度でかいっすね」
「子犬? ふむ、我はな、悪魔!アモンである!!!」
アモンは体を元の大きさに戻し、バーンの頭を噛み砕こうとした。
「ひぇ! きゅ、急に大きくなるのは卑怯っす!」
バーンはアモンの攻撃を間一髪の所で避けて、慌てて空を飛んだ。
「逃げ足の速い奴め、あと少しで食べれたと言うのに」
「よし! バーンがどいたから、カストル! バーンはアモンじいちゃんに任せて、俺達は先に進もう!」
「そうだな、アモン! バーンの尻尾の先だけなら、齧っていいぞ、食べるのは禁止、齧るだけだ!」
リードとカストルはバーンが塔から離れた隙に塔へと入って行った。
「ふむ、尻尾の先を残せば良かろう、あとは、我の腹の中だな」
「ひぃぃ、こ、こいつ、俺っちを食べようとしてるっす!」
「ほら、ワイバーンよ、降りてこい、我が、美味しく、食べてやるからな」
「ひぃいいい!!! これは、逃げるが勝ちっす!」
バーンは森の方向へ飛んで逃げた。
「ワイバーンの狩とは久しいな。ワイバーンよ、我を楽しませてくれよ」
アモンはバーンの後を追って、森へ入って行ったのでした。
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