どんまい、猫次郎
主人様が取り出した水晶には絶華ちゃんが映っていた。
「お兄様!!! やっと見つけた!!!」
「な! そんな、これは、卑怯だぞ!」
「何が卑怯よ! 絶華ちゃんが凪ちゃんにお願いして、わざわざ会わせてくれたんだから! で!お兄様はどうして、魔蟲の洞窟にいるの!」
「それは、愛する女性の仕事を手伝うためだ!」
「愛する女性? お兄様、もしかして、好きな人できたの!? あの、女遊びが大好きなお兄様が? 1人の女性を好きになったの!?」
「そうだ、傷心しきっていた、我を助けてくれたカッコよく、とてつもなく可愛い、我の妻」
「妻!? 結婚してたのなら、絶華ちゃんにどうして手紙よこさなかったのよ!!!」
「家出をしたのに手紙なんて送れるわけないだろ。我はもう家を出た、桔梗国を背負うのは絶華、お前だ。我は、愛する妻と一緒に平和に暮らす」
「絶華ちゃんに押し付けないで、絶華ちゃんは魔王様に嫁ぐから、桔梗国にはいられないの!」
「まだ、そんな事を言っているのか、パッとしない魔王なんかよりも、桔梗国の家臣から婿を探したほうが良い男が沢山いると思うのだがな」
「お兄様はその家臣達が決めた花嫁が気に入らなくて家出したんでしょうが!!!!」
「まぁな、で、零鐘から話は聞いたが、サーエンス国の件はどうなった?」
「あー、まだ、解決してないんだよねぇ。まぁ、これは、これで、魔王様が来てくれたから、絶華ちゃんは大満足なんだけどね」
「大満足とは?」
「魔王様を誘惑し放題って事! 舞妓と遊んでた時は殺意湧いたけど、今の魔王様はオビリオン様に監禁されて仕事の真っ最中!その間に、絶華ちゃんが魔王様の仕事を手伝って、魔王様の好感度アップ、そして、オビリオン様の好感度も一緒にアップさせる作戦を決行中!!! だから、お兄様、絶華ちゃんが安心して魔王様に嫁ぐ為に、その奥さんと一緒に帰ってきて」
「あぁ、いいぞ! ここでの仕事が終わったら桔梗国に行くつもりだしな」
「あっ!フィリ!? 帰ってきてたの!?」
「知らない女がそっちに近付いて行くのを見てな、ジェットコースターはやめて、一旦戻ってきてたんだよ」
「初めまして、景雹の妹の絶華ちゃんでーす。お姉様のお名教えてもらってもいいですかー」
「あたしはドワーフのフィリ、コウイグ国で冒険者と鍛治師をしている」
「ドワーフ! 女の人は珍しい!!! フィリお姉様、頼りにならないお兄様だけど、これからもよろしくお願いします」
「絶華ちゃんもこれからよろしくな」
「はーい! フィリお姉様となら、絶華ちゃん仲良くなれそう!」
「それで、その、話の内容的に景雹は桔梗国の王子なのか?」
「そうでーす。お兄様は桔梗国の王子様だよー」
「王子、そうか、だから、金貨以外使った事がなかったんだな」
「いや、そもそも、お兄様は引きこもりなのに女遊びは好きでね、毎日知らない女性がお兄様の部屋にいてお父様が穀潰しって言われてたんだよ」
「なっ! 絶華! 妻の前でそんな事言わなくて良いだろ! 我は心を入れ替え、我はフィリ一筋なのだからな!」
「フィリお姉様、お兄様を変えてくれてありがとうございます。お父様にお兄様が結婚したことを伝えなきゃ!!! 絶華ちゃんはお父様に報告にしに行くから、じゃあね!!! フィリお姉様、桔梗国に来たら女子会でもしよー」
「女子会? まぁ、いいぞ」
「やった! お兄様、桔梗国に来る前に絶華ちゃんにいつ来るかちゃんと連絡してね! それじゃあね!!! お父様!!! お兄様が!!!」
絶華ちゃんとの会話が終わった。
「ここで長話はなんだから、私の家に招待するわ」
「その、貴方が主人様なのか?」
「えぇ、私は魔蟲の洞窟と森の主人、凪よ。よろしくね」
主人様は手を出したので、フィリは手を握り返した。
「コウイグ国、ドワーフのフィリだ」
「フィリさんね。それじゃあ、私の家に行きますか。あっ、シャドウ、秘密を全部言った罰でカストルさんに宿題10倍にしてもらったから、帰ったら宿題終わるまで遊ぶの禁止だからね」
「そ、そんなぁでござるぅ。拙者、酷い目にあったから、少しは宿題免除してほしいでござる」
「ダメよ。七福も宿題2倍にしたからね」
「えー!!! 僕もなの!!!」
「えーじゃないわよ」
「にゃ、にゃ、にゃ、シャドウと七福、カスカスの宿題頑張れだにゃ〜、主人様〜、俺頑張ったから〜、ナデナデして欲しいのにゃ〜」
猫次郎は主人様の足にすりすりと頭を当てていた。
「よしよし、って、猫次郎、この頃、ストレス感じてる?」
「ストレスだにゃ?」
「そう」
「にゃ〜? ストレスよりも腹が痛くなるまで笑ってたのにゃ」
「なら、その、猫次郎の背中の毛が丸く、無い場所があるのよね。こう言うのってあれでしょ、円形脱毛症!」
「えんけいだつもうしょう? にゃんだそれ?」
「じゃあ、こうすれば背中見えるかしら?」
主人様は鏡を作り出して、猫次郎が背中を見えるようにした。
「どれどれ、にゃ!? おい!フィリ!!! 俺の毛、刈り過ぎだにゃ!!!」
「何言っているんだ、あたしは言われた通りに落とし穴に落ちたし、腹の毛じゃなくて、背中でも良いって言ったのはお前だろ」
「それでも、これは!やりすぎだにゃ!!!!」
猫次郎の背中の一部分の毛がごっそりと無くなり、猫次郎の皮膚が丸見えになっていた。
「そうか? 1センチだけ刈ったんだけどなぁ」
「白々しいのにゃ!!! くそぉ、こうにゃるにゃら、腹の毛を諦めた方が良かったのにゃ!!!」
「後で、カストルさんに毛を生やす魔法があるか、聞いてみようか」
「にゃ〜、主人様〜、主人様なら毛を生やす薬作れないかにゃ?」
「うーん、出来るかな? それよりも、カストルさんに聞いた方がいいと思うわよ」
「にゃ〜、俺の毛がぁ〜、俺の毛がぁ〜」
「ふっ、散々拙者達を笑った罰でござる。ざまぁでござる!」
「それも、そうだね。僕が必死に逃げていた時、めちゃくちゃ笑ってたよね」
「にゃ〜、そんにゃ〜」
「あたしは珍しい素材とれて嬉しいけどな!」
「こんにゃろー!!!」
猫次郎が渾身の猫パンチをフィリの足に当てようとした時、景雹がフィリを守った。
「我の妻を攻撃するとは、このクソ猫は氷漬けだ!!!」
「にゃっ!?」
景雹の妖術によって、猫次郎の体は氷に覆われた。
「おー、景雹さんナイス、これなら、猫次郎を懲らしめる事ができるね」
「拙者、一発こいつの頭を殴りたいでござる」
「カストル先生とガールゥダさんにこの状態の猫次郎渡してみようよ。2人とも大喜びで受け取ってくれるよ」
「そうでござるな、日頃の鬱憤が溜まっている人に渡すのが良さそうでござるね!」
「た、す、け、ろ、にゃ、づめたーいのにゃ!!!」
こうして、主人様の家に向かったフィリ達は、氷漬けになった猫次郎をガールゥダに預け、主人様から食事を頂いたあと、主人様との話し合いが始まったのでした。
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