救いの忍者!
景雹と七福は真白が作った落とし穴の中で喧嘩している最中、フィリは5個落とし穴を攻略し、6個目の落とし穴を猫次郎に決めさせていた。
「にゃ〜、このままだと、俺の腹の毛がなくなってきちゃうにゃ〜」
「魂猫の毛は珍しいからね。どんな効果を持っているのか調べるのが楽しみだ」
「知らずに欲しがってたのかにゃ?」
「そりゃあ、レア中のレア素材なんて手に入ることなんて滅多にないからな。落とし穴に落ちるだけで貰えるなんてラッキー」
「にゃ! くぅぅう、ヤングの口車に乗らなきゃよかったのにゃ」
「拙者、暇でござるぅ。フィリが簡単に落とし穴を攻略しちゃうなんて、面白くないでござるぅ」
「おい、枝、何が面白くないだって」
「フィリは拙者にだけあたりが強いでござるぅうう」
すると、遠くの方から男の声が聞こえた。
「たーすーけーてー」
「キスなんてしたくないよぉ!!!」
「フィリ!!!! たーすーけーて!!!!」
フィリは声に気付き振り返った。
「ん? もしかして、景雹か?」
「七福! 七福の声でござる!!!」
「にゃ〜、にゃんか楽しそうな気配がするのにゃ〜、よし、声がする方向に向かうのにゃ〜」
「分かった」
フィリは声がする方向に歩き始め、落とし穴から声が聞こえてきた。
「いやだぁぁぁぁ!!! おじさんとキスなんていやだぁぁぁあ!!!」
「我だって、魔物とキスなんてしたくない!!! フィリ!!! 助けて!!!!」
猫次郎はフィリの腕から降りると、落とし穴を確認した。
「にゃ、にゃ、にゃ、七福と鬼が喧嘩しているのにゃ、面白いのにゃ!」
「おーい! 景雹!大丈夫かー!!!」
「七福!!! 大丈夫でござるかぁ!!!!」
落とし穴の七福と景雹は上からシャドウとフィリの声を聴き、2人は救いの神がきてくれたのだととてつもなく喜んだ。
「シャドウ!!!! 僕はここだよ!!! 助けて!」
「フィリリリリリ!!!! 我を助けて!!!」
「仕方ないな、枝、一緒に行くぞ。猫次郎はそこで待ってて」
「にゃにゃにゃ、俺は高みの見物でもするにゃ〜」
「七福!!! 待っていろ! 拙者が助けるでござるぅ!」
フィリはシャドウを持ったまま、落とし穴に落ちた。
「ふぅ、それで、ここの脱出方法はなんだ?」
「七福!!!! 助けにきたでござるよ!!!」
「シャドウ! ん? なんで、フィリさんに捕まれてるの?」
「ふっ、拙者、フィリから逃げられないのでござる」
「フィリリリリリ!!! さぁ! 我とキッスしよぉ!!!」
景雹はフィリに抱きつこうとしたが、フィリに交わされた。
「急になんだよ。で、あの看板だな」
フィリは看板を読んだ。
「あー、だから、ここから出られなくて喧嘩してたのか」
「うわっ、この落とし穴は真白の落とし穴でござる」
「それじゃ、ほら、景雹」
フィリが景雹に手招いた。
「え! フィリが我とキスを!」
フィリがキスをしてくれると思った景雹は嬉しそうにフィリに近付き、唇を尖らせてフィリからのキスを待った。
「違う。ほら、枝、出番だ」
「え?」
唇を尖らせていた景雹の唇にフィリが手に持っていたシャドウの口が当たった。そう、それは、まさしく!キスなのである!
「せっ、せっ、拙者のファーストキスがぁぁ!!!」
「にゃにゃにゃ!面白すぎるのにゃ!!! もっと、やれにゃ!」
「ほら、あと9回」
「や! やだ!!! 我はフィリとキスを!」
「七福助けててござるぅううう!!!」
「う、うわぁ、シャドウ、僕の代わりに景雹さんにキスしてくれてありがとう。その、あと9回頑張って」
「なっ! 拙者は七福を助けにきたのにこの仕打ちは可笑しいでござる!!!」
景雹はフィリから逃げ、フィリはシャドウとキスをさせるべく、景雹を追いかけた。
「おい! あと9回残ってるんだから逃げるな!」
「嫌だ! フィリがキスするまで我の唇は誰にも渡さない!!!」
「何言ってるんだよ。さっさと出るにはキスするしかないんだろ。覚悟決めろよ景雹」
「なんで!!!フィリとなら、何度でも我はキスするのに!!!我、魔物とはキスしたくなーい!!!」
「拙者も嫌でござる!!!」
モニターでこの様子を見ていた主人様は、これは可哀想だからこの罠は撤去しなきゃと考えた。
必死に唇を死守する景雹に対し、フィリは時間がかかると考え、標的を変更した。
「確か、君は七福っていうのよね? ちょっと、こっちに来てくれる?」
「ん? フィリさん僕に何かよう?」
「ちょっと、こっちに来てくれるだけでいいから」
「なんだろう?分かった」
七福は何も考えず、フィリに近付いてしまった。
「捕まえた!これで、この落とし穴も脱出できるわね」
フィリは七福を片手で捕獲した。
「も、も、も、もしかして!?」
「し、七福! 拙者、もう、お婿に行けなくなるでござるぅうううう!」
「や、やめて、シャドウなんかとキスなんてしたくな!!!」
フィリは嫌がる2人を強制的にキスさせた。
「ゔっ!」
「うげっ!!!」
2人は互いに吐きそうになっていた。
「よし、あと8回」
「にゃ、にゃ、にゃ、最高だにゃ、笑いすぎて腹が痛すぎるのにゃ」
七福は体を震わせてフィリの手から逃げた。
「フィリさんだけキスしないのずるいぞ!」
「そうだ!そうだ!でござる!!!拙者なんか2回もキスしているでござる!!!」
「フィリも我とキスをすべきだぁ!!!!」
「なんで、あたしがキスしなきゃいけないんだよ。そもそも、キスなら誰でもいいんだろ。なら、ほら、七福とシャドウと景雹で十分じゃないか」
「我、男!」
「拙者オスでござる!」
「僕もオスだよ!」
「それがどうした?」
「え?」
「口がなかったらキスできないけど、口があるだろ?それなら、キスができるよな」
「なっ!?!?!?」
「ほら、あと8回キスすれば出られるんだから、黙って枝にキスされろ」
「拙者、カストル先生の授業が嫌で七福と逃げたでござる。でも、拙者、心を入れ替えるでござる。これからは、キチンと授業受けるでござる。カストル先生、今まで本当にごめんなさいでござる。だから、誰か、助けてぇぇでござるぅううううう!!!」
「い、やぁぁぁあ!!!!」
「零鐘助けてー!!!!」
こうして、シャドウを手に持ったフィリから七福と景雹は必死に逃げ、大切な唇を守ろうとしたが、フィリのフィジカルの前になす術もなく、逃げた末、景雹は計7回、七福は計3回、シャドウは計10回キスをしたのでした。
シャドウの活躍によって、七福と景雹、フィリ、シャドウは真白の落とし穴から上がることが出来たのでした。
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